第4話

第四話 樺桜
15
2022/09/24 09:09
瀬戸先生
瀬戸先生
はい、では2時間目を始めます…
と、その前に!
瀬戸先生
瀬戸先生
体育は体育館でやるので、全員、移動してください。
瀬戸先生
瀬戸先生
やることは向こうに置いてあるくじを引いて決めてもらいます。とりあえず、荷物持って移動お願いします!
毎時間恒例の先生動画、第3弾。
この日に向けての用意周到さが本当にすごい。
淡々と話しているように見えて、今日一日みんなに楽しんでもらおう、っていうエネルギーが伝わってくる。
春花
春花
早く先生に会いたいな
私も。
今日ここにいるみんなも、同じことを思ってるはず。
蓮
体育館、冷えてるといいな
湊
久々の体育館楽しみ☆
春花
春花
怪我しないでね
湊
現役陸上選手なめんな☆
朝美
朝美
あ、それこそリレーとかやるんじゃない?
湊
ほんとはグラウンドが一番いいんだよなー!
朝美
朝美
暑いよ、外
移動途中、ジャンジャン蝉が鳴いているのが聞こえてきた。学校で聞く蝉は、不思議と懐かしい感じがする。
蓮
にしても意外と迷わず行けるもん……
蓮
……春花?
隣を歩いていた春花が、通りかかった理科室の前でぴたりと立ち止まっている。
春花
春花
何か中から聞こえる
朝美
朝美
……え
春花
春花
何か、物音が
蓮
先生が授業準備とかしてるんじゃないの
春花
春花
でも中真っ暗だよ
湊
俺、噂で聞いたことあるんだけど、
湊
昔、理科室であった事故で犠牲になった生徒が、霊になって出るって
春花
春花
やめて!!!
湊
うわあ!!!大声出さないで!
蓮
お前自分で言っといてビビりまくりじゃねえか
朝美
朝美
大丈夫だよ、私たちもいるから
春花
春花
そ、そうだよね!
蓮
湊、くっつくな暑い
湊
は、早く行こうぜ!
そんなわけで足早にその場を去ったんだけど、ちょっと不吉な感じもする。体動かして忘れよう。

体育館は蓮の望み通りしっかり冷やされていて、床を踏むとあのキュッという音が響いた。

くじを引くとドッジボールって書いてあったからチーム分けをしてるとこなんだけど……
朝美
朝美
顔色、悪くない?
理科室の一件で、春が少ししょんぼりしてるように見える。
湊
だーいじょうぶだよ!元気出して☆
蓮
お前が変な話したからだぞ
湊
えっ、そ、そっか…ごめん……
蓮
春花、俺のそばにいろよ
朝美
朝美
春花
春花
あっありがとう
湊
あっ、あっ…
湊
あまーーーい!!!!!!
朝美
朝美
びっくりした!
蓮
うるさい音量考えろ
朝美
朝美
待ってめっちゃ声響いてるんだけど笑
春花
春花
春ちゃん笑いすぎだよ
ヤバい、体育館の残響で余計笑えてくる。
湊
てか待って、蓮、もしかして照れて
蓮
照れてない
朝美
朝美
蓮からそんな甘いセリフが出るなんてね
蓮
はいはい俺らみんな同じチームらしいから行くぞ行くぞ
背を向けてコートに入っていく蓮と、それに慌てて続く春。二人から、いや、具体的にいうと繋がれた2人の手から、甘く優しい空気が漂っている。
湊
朝!
湊
俺らも行こ☆
声こそかけてくれるも、あっさりと私をおいてコートに走っていく。私も湊に続く。

ひゅーん、ぱっ、ひゅーん、ぱっ。
ゲーム始めは、大きな山を描くようにゆったりとボールが飛び移る。飛んでは手へ、飛んではまた他の人の手へ。

キュッ……キュッ、キュキュキュッ
音が増えて、だんだん本気モードになっていく。
遊びではなく、スポーツとして成り立ちそうなくらいテンションが上がってきたのに、私はなぜかその中に入り込めない。

キュキュッキュッキュキュキュッキュッキュキュッ
ぱっ、ひゅーんドンッ、ぱっ、ひゅーんドッ
こっちこっち!パスパスパス!!よけろっ
これでもかってくらい、いろんな音が五感を刺激しているはずなのに。
私は確かにボールパスの中心にいるはずなのに。

びゅんびゅん飛び交うボールを相手にし続けていたら、気づけば自分チームの内野は私と湊の二人になっていた。
外野に味方が大勢いる。春と蓮が並んで立っているのが見えた。同時に、二人の繋がれた手を思い出す。

受け止めたボールを投げようとして、やめた。
朝美
朝美
湊、パス
2人の目がばちんと合う。そしてすぐにボールは湊の手の中に瞬間移動した。

ふうっと息を吐き出し、もう一度外野に目を向けた、その時、春が膝から崩れ落ちるのが見えた。