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第1話

シロ
62
2019/11/14 08:48
《シロ視点》
シロ
シロ
あれから、6年…。
短かったけど、とても楽しかったあの時。あの時から6年が経った。私は16歳になった。
シロ
シロ
クロ、お姉様…会いたいよ…。
お姉様はムーンヒルに行ったっきり帰ってこない。会いたい。家には使用人がいるけど、寂しくてたまらない。1人や2人減っただけでも生活ってこんなに変わるもんだな。本当にそう思わされた。6年経った今、戦況もさらに悪くなっているみたい。相変わらずどこの国と戦っているのかは知らないけど、日に日に食料が少なくなっているのがわかる。ファリンの人々(戦に行ってない人)の大半は他国ヘ逃げていってしまった。ファリンの綺麗だった街はもう、原型をとどめないくらいに破壊されてしまっている。道には瓦礫が散乱し、怪我をせずに歩くだけでも精一杯である。たくさんの人々が死んでいく。もう、嫌だ。楽しかったあの日に1度だけでいいから戻りたい。お姉様に会いたい。クロに会いたい。…そういえば、クロはどうしているのだろう。確か、クロは私と同じ年だと言っていた。勉強をたくさんして、立派な天使になっているのだろうか。私のこと、忘れてないかな。クロとまた、遊びたい。6年経って、記憶もだんだん薄れてきている。お姉様の顔は、ずっと一緒に過ごしてきたから覚えてる。けど、クロとは本当に短期間の間しか一緒にいなかった。だからだろうか。どんどん記憶の中のクロの顔がぼやけていく。このまま、クロのことを忘れてしまうのではないか。忘れてしまうのが怖い。クロ過ごしたことを忘れてしまうのが怖い。…だから。
シロ
シロ
弱音なんて言っていられない。前を向いて進むんだ。クロ、絶対に見つけるから!だから、待っててね!クロ!
青空を見上げて私は思う。クロとお姉様も違う場所で同じ空を見ているのかな、と。

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