春
そよ風に誘われて空を見上げると、
そこには今を盛りと咲き誇る桜のカーテンが下りていた。
小鳥たちがさえずる賑やかな朝、平成高校の校門前では鳥たちに負けず劣らず
甲高い女子生徒たちの声が上がっていた。
視線の先にいるのは、男子3人組。
つい1週間前に入学したばかりの1年生ながら、
すでに校内でも話題になっているグループだ。
ふわっと揺れる柔らかな茶色の髪の男子は山田涼介。
みんなの目を引くのはその整い過ぎた容姿だ。
華やかな顔立ちをし、そこに居るだけで存在感が際立っている。
彼は女子らの熱い視線をまったく気に留めていない。
手にしたソーダのペットボトルでトントンと肩を叩き、無表情に前を向いている。
横を歩くのは中島裕翔、黒髪をなびかせ、優しげな笑顔で挨拶を返す。
こちらもまた、美男子である。
周りには黄色い悲鳴が響き渡った。
イケメンながら、可愛いという表現もしっくりくるのは伊野尾慧。
明るい茶髪に大きな瞳をくりくりと輝かせる彼。
全員がもれなく華やかで、人込みですれ違ったとしても間違いなく二度見してしまう。
いつの間にやら男子生徒達も集まり、噂話に花を咲かせている。
そんな中、明るめの髪色に制服を着崩した男子生徒が彼らの前へ進み出た。
脇には2人の体格のいい男子生徒を侍らせている。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!