あなた side
ソーダみたいだって思った。
あなたの名字あなたは海風で冷やされたウッドデッキへ座り込み、その人の後ろ姿を見つめていた。
真っ白な雪雲の下で昨日まで賑やかに電飾を輝かせていたクリスマスツリーは
撤去作業の最中。
その中を颯爽と去っていく男の子。
柔らかな茶色の髪。
凛とした背中。
圧倒的な存在感。
……憧れた。
私はいつも下ばかり向いていた。心を閉ざしていた。
息を殺して石のように小さく身をかがめていれば、傷つかない。何も感じない。
でも、心のどこかで望んでいた。
変わりたいって。
ぐっと両手を握りしめると、手の内にあったパンフレットがくしゃりと歪む。
『平成高校』と上部に大きくプリントされた紙面では、
ブレザーをお洒落に着こなした男女4人の学生が明るい笑顔を浮かべている。
ここへ入学すれば何かが変わるかもしれないと。
だけど。
本当に変えたいのは環境じゃなくて自分自身。
少しでもキミに、近づきたい。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。