見なきゃ良かった
またそんな感情が蘇る
馬鹿だね、私
なんて独り言を言っても、「そうだな」と言
う、いつもの貴方のからかいの笑みは、もう
見えない
おかしいね
見ればまた、楽しかった貴方との過去を思い
出して、涙が出てくるのに
それでも、なぜかスマホを開いてしまう
見なきゃ良かった
この涙は、一体どれくらい流せば止まるんだ
ろう
貴方が私の隣でいつの間にか寝てしまった時
にこっそり撮った寝顔も、お店で風船を貰っ
て小さな子供のようにはしゃぐ無邪気な笑顔
も、全部いつかの話になっていく
未だに貴方を思って一人で泣くこの瞬間も、
一秒経つごとに、私の背中をすり抜けて行
く
行かないでよ
いなくなるんだったら、一緒にいた、この今
までの思い出も持って行ってよ
ズルいよ
いや、やっぱり、ごめん
そんな事言ったって、もう貴方が後ろから大
声で私の名前を呼んでくる事は無いのに
どうして、まだ期待なんかしてるんだろう
どうして、ずっとアルバムから貴方の写真を
消せないでいるんだろう
……ごめん
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。