第24話

打ち上げ
852
2020/10/20 02:21
あなた

あー。
暇……。

レースが終わり企画的には一旦終了した為、VART号の点検も回数が減り練習日も無くなった。
先輩
暇とか言うなよ。
仕事はあるんだからな。
あなた

はぁい。

これで会うことも無くなるのかな……。
あなた

お疲れ様……。

あなたはVART号を撫でるとシートを被せた。
先輩
でも、久しぶりにお前らしいの見たな。
あなた

え?
何時ですか?

先輩
レースの時。
他の奴が嫌味言ってたの聞いてレース出るって言った時。
最近のお前引っ込み思案が多かったから。
やっと俺の知ってる決めた事には真っ直ぐ進むお前見たなって。
あなた

決めた事……。

神様……。
楽な方には行かず……。
振り向いてくれるかも分からない恋に向き合うのはダメですか?
あなた

あ!

先輩
なに?
どうした?
あなた

いえ……なんでも……。

レースに夢中で界人くんとの話止めたままだった……。
いい事教えてあげようか?って言われたままだ……。
気になる……。
スタッフ
先輩ー。
打ち上げの日程決まったそうです。
先輩
お!
見せて。
打ち上げ!
そだ!
まだ打ち上げがある!

それから数日して打ち上げの日がやってきた。
石川界人
石川界人
あなたちゃん!
久しぶり!
あなた

あ、界人くん。
久しぶり。

打ち上げはテレビ関係の人も来る為、ホテルの大ホールで開かれた。
石川界人
石川界人
なんか今日いつもと違うね?
あなた

流石に作業服で来るわけには行かないからw
愛花ちゃんに見立ててもらったの。
あんま、ワンピースとか着ないんだけど……変?

あなたは自分の服を見た。
石川界人
石川界人
似合ってるよ。
青なのは浪川さんのカラーに合わせて?w
あなた

……。
愛花ちゃん……そのつもりだったのかな……。

石川界人
石川界人
え?
今更www
でも、似合ってるよ。
見違えた。
あなた

ありがとう。
あ、界人くん。
レースの時にいい事教えてあげようか?って話止めちゃったじゃん?

石川界人
石川界人
あぁ。
あれね。
知りたい?
あなた

知りたいよ!
気になるもん!

石川界人
石川界人
それはね……。
浪川大輔
浪川大輔
2人とも久しぶり。
石川が少しあなたに近寄ると浪川がやって来た。
石川界人
石川界人
浪川さん、遅刻ですよ。
浪川大輔
浪川大輔
仕事押しちゃってさ。
お前、今日いつもと違うね?
あなた

変ですか……?

浪川大輔
浪川大輔
似合ってるよ。
俺先に挨拶してくるわ。
またな。
浪川は他の人に挨拶をしに、その場を離れた。
石川界人
石川界人
やっぱり……。
あなた

何が?

石川界人
石川界人
……。
あなた

石川に手招きをされあなたが近寄ると界人があなたの耳に顔を近づけた。
あなた

嘘!

石川界人
石川界人
信じるか信じないかはあなた次第!
石川はあなたの方に手を置くと「俺も挨拶してくる」といなくなってしまった。
あなた

あぁ……。
靴擦れしちゃってるわ……。

暫くあなたも色々な人を先輩から紹介され、落ち着いたのを見て会場を出て、ソファーに座り靴を脱ぎ足を見ていた。
あなた

ヒールなんて普段履かないからな……。
コンビニ行って絆創膏買ってくるかな……。

浪川大輔
浪川大輔
会場に居ないと思ったら……。
どうした?
酔った?
顔を上げると浪川が立っていた。
あなた

いぇ……。
ちょっと……。

浪川はしゃがむとあなたの足首を見た。
浪川大輔
浪川大輔
靴擦れ?
ちょっと待ってな。
そう言うと浪川は立ち上がり、何処かに行ってしまった。

数分すると戻ってきた浪川は、片足を上げて床にしゃがむと「ちょっと触るな」と言うとあなたの足を上がってる足に乗せた。
浪川大輔
浪川大輔
結構血出てるな……。
痛い?
あなた

ちょっと……。

浪川大輔
浪川大輔
フロント行って絆創膏とアルコール綿貰えたから、消毒したら貼るな。
あなた

ありがとうございます……。

浪川大輔
浪川大輔
お前我慢するタイプなのは知ってるけど、痛いなって思ったらすぐ手当しないとダメじゃん。
あなた

すいません……。

手当してくれてる浪川を見ながら、石川との会話を思い出した。
石川界人
石川界人
浪川さんね。
人に対して「お前」って使う時は認めてるか、好きな人にしか使わないんだよ。
浪川さんは……。
あなた

私の事……好きですか……?

その言葉に一瞬浪川の手が止まったように見えた。
浪川大輔
浪川大輔
出来たよ。
絆創膏を貼り終わると、浪川はあなたに靴を履かせた。
浪川大輔
浪川大輔
歩けそう?
あなた

はい……。

私のした質問には答えて……くれないんだ……。
あなた

ありがとうございました……。
私……戻りますね。

あなたは立ち上がり、会場に戻ろうとすると浪川に腕を掴まれた。
浪川大輔
浪川大輔
あ、ごめん……。
掴まれた腕はすぐ離れた。
あなた

私に気がないなら……優しくしないで下さい……。

目に涙を溜めながらあなたは浪川を見ていた。
石川界人
石川界人
2人ともー。
そろそろお開き……。
え?
あなたちゃん?
石川に声が聞こえるとあなたは走り出した。
石川界人
石川界人
浪川さん!
追っかけて下さい!
浪川大輔
浪川大輔
追っかけるのはお前だろ?
あなたちゃんに言われたんだよ。
お前との事を真剣に考え始めてます。って
石川界人
石川界人
それ、レース後ですか?
浪川さん!
俺レースの時に振られてんですよ!
界人くんがクラッシュして心配したけど、浪川さんじゃなくて良かったって。
界人くんごめんね。って。
浪川大輔
浪川大輔
……。
石川界人
石川界人
好きじゃないなら、なんで優しくするんですか!
浪川大輔
浪川大輔
忘れられないんだよ!
愛花の事……。
それなのに……あいつに付き合ってくれっていえねーよ……。
あいつが……辛くなるだろ……。
石川界人
石川界人
忘れなくていいと思います。
だって。
それはもぅ思い出なんですから。

このままだと、あなたちゃんとは接点無くなって会えなくなります。
浪川さんは、それでもいいんですか?
浪川大輔
浪川大輔
いいわけねーだろ……。
石川界人
石川界人
他の人には上手く言っときますねw
浪川大輔
浪川大輔
界人……。
ありがとうな。
浪川は自分の荷物を持つとあなたの後を追った。

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