声を弾ませる六組の女子
満足そうな女子に比べ、本当に落胆した顔のオスマン。
息を切らせながらやっとの思いでオスマンに謝罪をする。
痣にはなってないが、オスマンの握った手の痕が手首に残っている。
ゆっくりと呼吸を繰り返せば、落ち着いてきた。オスマンはリレーの準備があると言って、その場を離れる。彼女の後姿を見送り、私は観戦席へと戻った。
***
最後の種目で、一発逆転もありなクラス対抗リレーはとんでもない程の盛り上がりを見せた。最下位でバトンを受け取ったゾムが一気に四人抜きを果たしたり、オスマンの驚異的なスピードだったり。楽しかった体育祭も終わり、私達は椅子を持って教室へ戻った。
水飲み場で水を飲もうとしていたオスマンに声をかける。私はただ手を洗うために来た。
長い髪を横に流し、水を飲みづらそうにしている。
手首に巻いていたゴムをオスマンに渡せば、「ありがとう」と言って髪を一本に結び、軽く下の方でお団子を結った。サイドの髪はまとめられなかったようで、耳にかける彼女。手を洗いつつ、彼女の様子を観察した。
伏し目がちに水を飲むオスマン。他の女の子よりも骨ばっているので、喉ぼとけが出ているようにも見える。水を飲むたびに上下する小さなしこりと、彼女の首元を濡らす水、薄く開いた瞳が妙に色っぽかった。
口についた水を拭う仕草も。同じ女性とは思えない程綺麗で、心臓がドクンと音を立てた。
そのゴムを再び手首に巻き付ける。
オスマンが笑う
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。