パシンと乾いた音が教室に響く。
ゾムは助けを求めるような顔で俺を見た。
彼女の背中に触れながら、椅子に座るよう促した。教室に残ってる奴らは、こちらに興味ありげな表情で見てくるが、深く入ろうとまではしてこない。ゾムは隣の席の椅子を借りて座り、自分は彼女の前の席にある椅子に座る。
すると、彼女はふるふると頭を振る。その動きに合わせて、細い髪がはらはらと揺れた。
今度は止まったまま。さて、どうしたもんか。
くぐもった声は聞き取りづらい。
顔を上げたあなた。その表情を見て、「なんで」と言うゾム。それもそうだ。あなたは目を赤くして、泣いていたのだから。
そんな顔してこっち見んなや。ゾムは「どういうこと?」とでも言いたそうな顔をしていた。彼に目くばせし、とりあえず席を外すように言う。椅子から立ち上がり、教室の外に出たゾム。それを見届けてから、もう一度「どうしたん?」と聞いてみた。
キレるってこういうことなんやな。泣いている理由を聞いて、体中の血液が沸騰する感覚を覚えた。特に、こめかみのあたりと、後頭部、そして手のあたり。それから、この怒りを収めるためには、その原因を作った奴らに何かしらの制裁を加えなあかん。
きっと、本当の女やったらこんな感覚にはならんやろうな。
原因を作ったあいつらを探して、俺は教室を出た。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。