そうすれば自分に盾突くことはなくなるだろう。
父さんの話をしよう。父さんは姉が二人いる、末っ子だった。
母さんの話によると、父さんの姉二人は自由奔放な人間だったらしい。
そんな姉二人に、父さんの父さん、つまり俺にとっては祖母にあたる人は何も言わなかった。でも、祖父は違った。
由緒正しきこの家の人間として、節度ある行動をしなさい。父さんはそんな姉二人が怒られる姿を見て育ったので、反抗期という反抗期を迎えることなく、祖父の言うことをよく聞いて育ったそうだ。
そしてこの家を継ぎ、俺が生まれた。気が付いた時には俺は女の格好をさせられていて、女として扱われていた。
「なあ、なんで俺は男なのにスカート履くん?」
と幼心に母さんに聞いたことがある。母さんはさっと血の気が引いたような顔をし、「絶対に父さんの前で言わないで」と鬼気迫った顔で言ってきた。その顔が怖くて、俺はこくこくと何も言わずに頷いた。
ある日、日曜日の朝。毎週楽しみにしていた戦隊物の番組を見ていた。
父さんが起きる前、母さんがこっそり「内緒だよ」と言って見せてくれた。俺と同じようなスカートを履いているピンクレンジャーよりも、興味があったのは青レンジャー。
いつもクールで、たまにリーダーである赤レンジャーと喧嘩をすることもあるが、その冷静さがとても好きだった。その日はとてつもなく熱い展開で、青レンジャーが敵に捕まった赤レンジャーを救いに行くところだったのだ。いつも喧嘩ばかりしているが、仲間は見捨てない青レンジャー。
そして、その助けに「待ってたぜ!」と言って笑う赤レンジャー。いつもは中心にいる赤レンジャーの代わりに、青レンジャーがセンターだ。俺は立ち上がり、テレビの前で変身シーンの真似をしてみた。
手を腰にあて、もう一方の手を変身ベルトのあるへその下あたりにタッチし、ぐるっと大きく手を回す。そして決め台詞まで言ったところで、自分の後ろでひんやりとした空気が流れたような気がした。何事だろう。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。