簡潔に家庭科の先生へ伝えるあなた。教室で火器を使用したり、包丁を使う場合は予め家庭科の先生に伝える必要がある。あなたはそれを伝える係を仰せつかり、俺はその同伴としてやってきた。
ニシシと笑うあなたに、「それはどうも」と素っ気なく返した。家庭科室を後にし、俺達は部活に行くことにした。一旦教室へ荷物を取りに戻るため、一階の渡り廊下を歩いていく。
角を曲がろうとしたその時だった。今まで喋っていたあなたの声が止まり、
別の女性の声がする。
そしてびちゃびちゃと水が落ちる音。
水に濡れたあなたのブラウス。謝った女性が持っていたのは小さな黄色いバケツ。状況を整理しよう。
角を曲がって出てきたのは女子生徒。彼女の持っていた黄色いバケツは筆洗バケツだろう。ということは美術部。筆洗バケツをあなたとぶつかって、かけてしまったらしい。
あなたは心配をかけないように美術部の女子に笑った。でもそんなの無理な話で、俺は彼女のある部分に目が釘付けになっていた。きっと女子もそれを気にしているのだろう。白いブラウスに透けて見えるブルーの下着。
キャミソールも水が浸透しているようで、彼女の下着の模様までは見えないが形はくっきりと見えている。
階段を二つ飛ばしで駆け上がり、自分の教室へと向かう。自分の長袖のジャージを持って、今度は階段を三つ飛ばしで駆けおりた。
ジャージのチャックを外し、彼女の肩からかけてやる。
そう言って脱ごうとするあなたを制し、「あかん。着て」と強引に肩を押さえる。
***
家に帰ったのは、夕方の赤い光が無くなりかけた頃。母親にただいまを言い、部屋にいることを伝えた。リビングを見れば、父さんが新聞を読んでいた。ということは、あと少しで夕飯が始まる。着替えをし、髪を一つに結ぶ。父さんが食べ始め、それから俺と母さんが箸を取る。これと言った会話もない。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。