ナフキンを広げ、小さなピンクのお弁当箱と、おにぎり一つを袋から取り出すオスマン。本当にこれで足りるのが不思議だ。身体が大きいんだから、もっと食べてもいいだろうに。
小さなお弁当箱に箸をつけ、小さな口で丁寧に噛んでいくオスマン。対する私は大口を開けてもぐもぐととんかつを食べていく。
それは今日のホームルームで決められることだった。
***
それは、ある男子からの一言で始まった。隣のクラスはお化け屋敷、あとは劇とか、手作り石鹸工房なんてのもあった。他のクラスはリサーチできていないが、私達のクラスは無難に喫茶店をやることになった。
後ろの方に座っていた女子がそんなことを言った。男子が、「じゃあ、メイド喫茶やる?」と笑い交じりに言う。
他の皆も笑い出した。ふとオスマンの方を見ると、彼女は窓の外を見ていた。
あまりこういうことに積極的じゃないことは昔から知っている。でも、誰かとコミュニケーションを取るのが苦手でもなく、人見知りということでもない。
そんな彼女は他の子からも好かれていたし、勿論男子からも好意を持たれている。
彼女にそうチャットアプリを飛ばした。気づいてくれればいいんだけど。私の気持ちが届いたのか、彼女はスカートのポケットからスマホを取り出し、画面をスワイプし始める。
ないない。それはないなー。
それはお世辞なんかじゃなく、いつも綺麗な彼女の少し可愛いメイド姿を見たいと思ってしまったのだ。
私達がチャットアプリで話を始めている間、喫茶店のコンセプトは徐々に決まっていった。どうやら男子は女子の格好をして接客をし、女子は男装をするそうだ。
それじゃあ、役割を決めたいと思います。会計係の人、女装する男子の接客、男装する女子の接客、それからキッチン。最終的に抽選にするから、好きなところに名前書いてー!
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!