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第22話

今度は別の方の頬を平手打ちされ、その勢いで床に頭をぶつける。痛いなんて声も出ないくらい痛かった。

「オスマンは、」と母さんが父さんを止めに入ろうとするが、そんなのお構いなしに父さんは俺の肩を掴んで無理に立ち上がらせる。

「お前は女やで?ピアノの稽古でもしなさい」

と言われ、俺は自室へと戻された。頬を押さえながらとぼとぼと廊下を進むと、今までいたリビングから大きな音がした。皿が割れる音、椅子が倒れる音。
何があったのかはなんとなく分かる。いいことではないことも分かっている。それなのに自制ができず、父さんの言いつけも守らずにリビングの方へ忍び足で戻った。
や、めてください!お父さん!
お前があかんのやろ!なあ!?グレたらどうするん?ああ!?
そう言って母さんを殴りつけていた。母さんの綺麗な髪を引っ張り、真っ赤な顔で怒る父さん。怖かった。あの間に入るのが怖くて、俺はただ自分の部屋へ走った。

ピアノの蓋を開け、適当な練習曲を弾き始める。なるべく大きな音を出した。父さんや母さんにも聞こえるように。焦ってテンポが速くなったが、そんなの気にしてられない。

どのくらいの時間弾いていたか分からないけど、扉をノックする音が聞こえた。入ってきたのは母さんだ。紅茶とお菓子が乗ったトレーを持って、「ピアノ上手くなったわね」と腫らした頬を無理に歪ませて笑った。カタカタと震える手のせいで、スプーンがソーサーとあたって音を立てる。俺はそんな母さんに抱き着いた。

ごめんなさい、ごめんなさい。でも母さんは優しい笑顔で、「お母さんは大丈夫よ。ピアノもっと聞かせてちょうだい」と言う。母さんのために、とっておきのピアノを聞かせた。心を込めてピアノを弾いた。指の番号も気にしないで、とにかく弾いた。

終わった後母さんの顔を見たら、泣いていた。ごめんね、ごめんねと言って涙を流していた。俺は決めたんだ。母さんを守るって。女装をして、いい子にするんだって。
osmn
…別に、気の毒とか…もう慣れたんで
先生にそう伝えると、「そうか」とため息交じりに言う。
その、言いづらいんだが…部活動についてだ。申し訳ないが、運動部に入れることはできない
osmn
大丈夫です。分かってます
俺が陸上部に入れば、他の女子選手よりも速いタイムで走れる。そんなことして大会に出て、新記録なんて出れば学校側としても申し訳が立たない。それに特別運動が好きなわけでもない。