枕を抱えたまま
先生がクスリと色気のある顔で笑う
想像以上に
嬉しい返事だったんだもん
離れていても
私達は彼氏彼女だった
先生がずっとそう思ってくれてたことが
すごくすごく嬉しかったんだもん
込み上げてくる“嬉しさ”と
“照れ”や“恥ずかしさ”
なにより
色気と無防備さが
絶妙に同居している枕を抱えて笑う先生を見ていたら
なんだかもう堪らない気持ちになった
好き
もう
ほんとに好き
この人が
好きすぎる人が…
好き過ぎてどうにかなっちゃいそうな程の人が
同じベッドの中
すぐ目の前で私を見つめてくれてる
そんな感情で
じっと先生の顔を見つめたあと
ベッドの中
もぞっと身体を動かし先生に身を寄せてくっついた
そんな私の行動に
先生がふっと小さく微笑んだのがわかった
そして
今まで枕を抱えていた腕を
ぴとっとくっつく私の身体に回して
優しく抱擁してくれた
腕の中
大好きな香りと腕に包まれて
先生の鎖骨のあたりに顔を埋めていると
頭の上から
そんな言葉がポツリと聞こえた
私に話しかけてるっていうより
独り言みたいなその言葉
くいっと顔をあげて
先生を見つめると
え
なんの話?
なんでこのちょっと甘い雰囲気で
そんなことを急に悩み出してるの?
きょとんとする私とは裏腹に
いつもの淡々とした表情で
私を見つめ返している先生
なにやら2つの約束があるらしい
話がまったく見えないけど
先生が約束を破るなんて言い出すのも珍しい
お、お父さん?
先生はそれに“わかりました”と返事をしたらしい
なにそれ…!
先生とうちの親がそんな話までしてたなんて
なんだかめちゃくちゃ恥ずかしくなった
そこまで話して言葉を詰まらせると
先生はクスクスと小さく笑って
そっと顔を寄せてきた
鼻がつきそうな距離
唇が重なる直前
先生は低く掠れた声で囁いた
だって
死ぬほど好きだもん
もう
誰も
私達を止めないで
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。