涙も心も落ち着いてきた頃
先生にそう聞いてみた
親から帰ってこいって連絡が来てないから
多分今日ここに泊まることも
許してくれてるんだろうけど
殴られるまで話し合いが拗れた感じだったのに
泊まることの許可まで貰ってきた先生すごくない?
思ってても必要がないなら言わないよ
先生はそう言って
カチリとライターで煙草に火をつけた
形の良い唇から
ふーっと細く吐き出された煙を眺めながら
先生の人格とか人となりみたいなものを考えた
先生の話す言葉は
いつも不思議な説得力がある
前に先生のお姉さんに会った時
先生の過去をたくさん教えてくれたことがあった
お姉さん曰く
のらりくらりと大人を丸め込む子供だったらしい
先生、
今日もそんな感じに
私の親のことも丸め込んできたのかな?ㅎ
空中に消えていく紫煙を眺めながら
そんなことを思った
いきなり話が飛躍したから
先生はなにそれ?って表情でふっと小さく笑う
先生に鼻を摘まれながら
確かに、と私も笑った
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!