そりゃそうだ
まさか
あんなアロマキャンドルひとつで
私がここまで妄想を膨らませて
不安になってるなんて思うはずない
相変わらず布団で口元まで隠したまま
おずおずと尋ねてみる
先生は少しだけ上げていた頭を
またコテンと枕に預けて
リラックスしたように微笑みながら目を閉じている
質問した途端
閉じていた先生の目がスッと開く
え、なにその反応…
“そうだよ”とか“違うよ”とか
どちらにしろ
なにかしらすぐに返事が返ってくると思っていたのに
先生はじっと黙ったまま
私の布団から覗いている目を見つめている
なんか嫌な方に予感が当たってしまった気がした
だって先生のこんな様子
あんまり見たことがないもん…
一瞬何かを堪えるような表情をした先生が
静かな声で私の質問に答えた
やっぱり…
なんかもう泣きそう
“なんで受け取ったの?ってこと?”
そんな表情をした先生が
簡潔に理由を答える
先生の誕生日は12月30日
離ればなれだった期間に
先生の誕生日を迎えてしまっていた
一緒に過ごすことが出来なかった誕生日に
先生は女の人から贈り物を貰って
それがお風呂に置いてある…
もう嫌な予感どころじゃなかった
遠回しだけど核心に近づく質問
その質問に先生が答えるまで
一瞬の間が空いた
目を逸らさないままの先生が私に言ったのは
1番聞きたくない答えだった
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!