先生に
そんな小さな甥っ子くんがいるなんて知らなかったし
さっきまで感情メラメラ激らせてたから
なんだか急展開で事態が飲み込めないんだもん
とはいえ
ほっと胸を撫で下ろしている自分
すると先生は
枕を抱えていた腕を伸ばして
寝室の隅の方の壁を指差した
薄暗い部屋
じっとその方向に目を凝らせば
コンクリ打ちっぱなしの部屋の壁に
クレヨンみたいなもので
はっきりと幼い子供が描いたとわかる絵があった
人の顔らしきその上に
『てひよん』
って読めるような間違いだらけの文字も
消すに消せなくてそのままになってるらしい
ポカンとしたままの私に
先生はそう言った
先生が嘘を言ってないのは
もう分かってる
さっきまで
浮気を疑って先生に食ってかかる勢いだったのに
完全に調子が良いこと言ってるな、私ㅎ
先生も同じことを思ったのかな
私の鼻を
そっと優しい力で摘まれた
全力で疑ってかかった自分が
ちょっと恥ずかしかったけど
鼻を摘まれたまま謝ったら
“僕も意地悪して悪かったね”と
先生もクスクス笑いながら謝ってくれた
先生
そんな甘い瞳で見つめてくるの
本当に反則だから…///
顔が真っ赤になった
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。