1人じゃない…
先生の言葉に脳内がぐらりと揺れた
こんなのもうほぼ認めてるもんじゃん
私と離れてる間に
違う人とそういう関係にあったって
ショックだった
けど
ここで可愛く
メソメソ泣けるような性格でもないことは
私自身が1番よく分かってる
私達はあの日から離ればなれだった
先生の中では
私との関係はとっくに終わったことになってて
新しい恋人が出来たりしてるかも…
そう考えてしまうことが何度もあって
その度に落ち込んだ
けど
そんなことで引いてたまるかって
先生のことが死ぬほど好きだもん
もはや先生に対してなのか
相手の女の人に対してなのかよく分からない闘争心が
沸々と湧き上がってくる
一気に心が戦闘体制に入った
そうだねって…
いくら嘘つかない人でも
こんなにはっきりとそうだねって…
導火線に火がついた心
それが
爆発
語気も強く
一気に口から溢れ出してくる
ヒートアップし過ぎている私に対して
先生は冷静な声で答えた
心の中
見知らぬ女の人への嫉妬心でおかしくなりそう
先生だってひどいよ…!
ぐっと眉間に皺を寄せて
先生を問い詰めた
誰?なんて聞いたところで
相手は知らない女かもしれないけど
先生の口からはっきり言ってもらわないと
こっちの気も済まない
私はもう不機嫌通り越して
身体から火が出そうだっていうのに
先生は
“相変わらずだねㅎ”
なんて、何故かクスリと小さく笑った
な、な、なんで笑うのよー!!
今、先生に笑う資格なんてないんだけど!!
って思った時
先生が一緒に入浴した相手を答えた
ほら!!!!
って…
今なんて言った?
一瞬で感情の行き場がなくなった
中途半端な表情のまま固まってる私に
先生はもう一度言い直す
ポカンとしてる私に
更に言い直す先生
先生が
もう堪えられないって感じに
枕を抱えたまま笑ってる
若くて綺麗ってもう姉さん28だよ?
って呑気に言ってるけど
そうじゃなくて!
クスクスと肩を揺らしている
あのアロマキャンドルは
先生の誕生日にお姉さんからプレゼントされたもの
お姉さんは未婚のシングルマザーで
先生の誕生日に
甥っ子くんと一緒にこの家に泊まりに来たそうだ
(先生は“アポ無しで襲来した”って言ってた)
お兄ちゃんと一緒にお風呂に入りたいって
そうお願いしてきた甥っ子くん
火がゆらゆらしてるのを見たかったらしく
それなら、と
わざとお風呂の電気を消して
お湯に浸かりながらあのアロマキャンドルを
一緒に使ったんだと教えてくれた
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。