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それ以来、わたしは歯向かったりしなかった。
ユウの言われるまま、お風呂へはいったり、ご飯を食べたり、着替えをした。
彼はいつもわたしにプレゼントを買ってきてくれた。
服や雑貨。
お化粧品やアクセサリー。
わたしの好みを知っているユウ。
すべて気に入った。
わたしは次第に心を許すようになった。
「ユウ」
「なに?」
「トイレに行きたい」
「うん。いいよ」
ユウがわたしを、キュッと抱きしめる。
「杏奈……可愛い」
「……うん」
ユウは逆らわなければ優しかった。
わたしが逃げ出さないとわかってからは、拘束具を解く時間も増えた。
トイレにも行かせてもらえるし、ご飯も食べさせてくれる。
わたしはこの生活がわりと気に入っていた。
ユウから求められても、受け入れるつもりだった。
けれど、
ユウは
ーーなにもしてこなかった。
ユウはわたしに触れたいのだとばかり思っていた。
わたしの気持ち良さそうな顔だとか、
彼へ夢中になるわたしを見たいのだろうと思っていた。
けれど、そうじゃなかった。
いつもユウは平然としていた。
余裕な表情で楽しんでいた。
好きだ、とわたしに言う。
けれど、わたしを抱こうとはしない。
普通なら捕まえたその日に無理やり抱くのではないだろうか。
一日中、そばでわたしを愛でるのではないだろうか。
それなのに、ユウは違う。
胸に触れさえもしない。
わたしが、それを願っていてもーー
ユウの艶めいた瞳。
透きとおった声。
凛とした姿。
そのどれもが、わたしを魅了させる。
あぁ、ユウ。
あなたに触れられたい。
もっと愛されたい。
縛られたままでいい。
それでもいいから、
わたしを抱いて
お願い
ーー……
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。