その時だった。
「ッ、……」
ユウがいきなりわたしを抱き上げた。
突然宙に浮いたわたしは、慌てて足をばたつかせた。
「っ……ユ、ユウ!? ちょっと、な、に、するの?」
けれど、ユウは何も言わない。
無言でわたしを抱えていく。
廊下を出て、二階へーー
ドアを開ける。
そこはユウの寝室だった。
ユウがベッドにわたしをおろす。
「ねぇ、杏奈」
わたしにキスを落とす。それを、わたしは受け止めた。
「っ……ん」
「ごめん……」
と、突然ユウが謝った。わたしは首を傾げた。
「え、」
「杏奈を傷つけるようなことして……わざと、見せつけたりして……ごめん」
「ユウ……」
「嫉妬……してほしかったんだ。ほんとうにただそれだけだった。他の女の人なんて、どうでもいい。杏奈とじゃないと、気持ちよくなれない……」
そう言ってユウは、切なげな表情を浮かばせた。
わたしは、ギュウッと胸が締め付けられた。
そして、ユウへ甘い感情が膨らんでいく。
わたしは自分からユウにキスをした。
「ぁ、杏奈?」
驚いたようなユウの声。
わたしは、勇気を出した。
ちゃんと伝えようと思った。
言えなかった。
けれど、
ほんとは、
ずっと言いたかった。
「ユウ……わたし……あなたが好き……」
わたし、ユウが好き。
セックスしたい。
ユウと、繋がりたい。
落ちていく。
落ちていく。
快感に、落ちていく。
ユウの熱い身体。
わたしの熱を帯びた身体。
ふたつがひとつになる。
なんども繋がった。
わたしを見るユウの視線。
優しく抱きしめるその腕。
抱かれるたびに、わたしは声を漏らした。
「もっと泣いて」
「ッ……ん」
「そう。そっちのほうが興奮する」
「ユウ……」
「あー、イキそう。中で出していい?」
「だめ……っ」
「冗談だよ。可愛い、杏奈」
「……意地悪」
気持ちよさに酔いしれた。
こんなに感じたセックスは初めてだった。
終わった後、ユウが猫のように甘えてくれた。
ユウはわたしのストーカー。
そして、わたしの愛する人。
わたし……もう家に帰りたくないな。
ストーカーのユウにわたしは溺れていく。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。