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2018/10/22

第13話

どうして他の女の人を…?
そんなふうにして悶々と過ごしていたある日のことだった。

ユウが女の人を連れて帰ってきた。


「おじゃましますー」


女の人の声を聞いて、一驚した。


声の感じからして若そうだ。


やけに甲高くて、妙に色っぽい。




そう言えばユウが昨日言ってた。


大手取引先の受付嬢から会いたいと言われている、と。


わたしは悔しかった。



取引先の受付嬢だからという理由で、ユウから優しくしてもらえる女の人が羨ましかった。



「無理言ってすみません。突然家に行きたいなんて言っちゃって」


「平気。むしろ来てくれて嬉しいよ」


「おかださんからそんな風に言ってもらえるなんて……幸せですっ」


その言葉に、動きを止めた。


ーーおかだ?
……ユウの苗字……おかだって言うんだ。


わたしは知らないのに……。


握りしめる手に力を込めた。





ユウと女の人は、しばらく楽しく話していた。

それをじっと聞くしかなかった。

拘束されているため、耳をふさぐこともできない。




仲の良さそうな話し声。

やけに親しげで、親密な関係にしか思えない。



わたしと話すときとはすこし違うユウ。

どこか大人っぽくて……格好いい感じ。

あんな感じでわたしも対等に話してみたい。




胸が苦しくて落ち着かない。


この感情は、なんだろう。


必死で別のことを考えようとした。


それなのに、どうしてもユウを思い浮かべてしまう。


繋がれてどうすることもできないのに、不安ばかり抱いている自分が情けない。


わたしばかみたいだ。


やりきれない思いのまま頭を枕に預けた。


と、廊下から足音が聞こえてきた。
鍵の外れる音がして現れたのは、もちろんユウ。


「やぁ」


なんて言って、平然と笑いかける。


「ッ、……ユウ」


拘束されているわたしは、動けないかわりに思いきり睨んだ。


わたしは怒っていた。




この家に女の人を連れて来たこと。



「ユゥ……なんで女の人なんか……」


声を震わせて言った。

思わず声を荒げそうになった。



「シィ……静かに」



けれど、ユウは聞こうとしない。


人差し指を口にあてながらそばへやってくると、拘束具に手をかけた。



「じっとしてて」


「え、」



慣れた手つきで、彼は拘束具を外していった。


怒りと戸惑いのふたつの感情が複雑に絡み合う。
シュル……シュルーー

ユウは無言で四ヶ所の拘束具を、なんの躊躇もなく解いていった。


「これでよし。ほら、自由になった」


すべての拘束具を外されたわたし。

わけがわからない。

頭を悩ませた。



「ねぇ……ユウ」


「あれ、見て」


ユウが壁を指差す。



よく見ると、壁に小さな穴があった。


これまで気づかなかった。


ユウがわたしに微笑みかける。


「見てていいよ」


「え、」


「覗き穴」


「……ど、どうして」


「じゃ、またあとでね」


ユウは部屋を出ると鍵を閉めた。
遠ざかっていく足音。


そして、ふたたびリビングから話し声が聞こえてくる。


意味がわからなかった。


な、なんなの?


部屋でひとり取り残された。


自由の身になったのに、ちっとも嬉しくない。


それよりも、隣の部屋が気になる。



きゃっきゃっとはしゃぐ女の人の声。

それを気さくに受け答えするユウ。


ふたりのやりとりが、穴の向こうにある。


拘束具を外した理由って、


わざわざのぞき穴を教えた理由って、


ーーユウと受付嬢がなにをしているか見せるため?


「それって……ユウの思惑通りじゃない」


ため息まじりに呟く。
わたしはユウの良いようにされて腹が立った。


拘束具がなくなった今、逃げようと思えばなにか手があるかもしれない。

できることはあったはずだった。




のぞき穴なんて、見なくてもよかった。


声が聞きたくなければ、耳を手で塞げばいい。


お布団に潜り込んで、耳を塞いでいればなにも知らなくて済む。


あとから、ユウがなにを言っても、見てない聞いてない。


そう言えばいい。


……なのに、だめだった。


声、音……そして、視覚。


穴の向こうにある景色が気になって仕方がない。




隣の部屋でユウと受付嬢はなにをしてるの?


どんな風に笑ったりしてるの?


そしてーー


女の人の顔……。
……わたしより美人かな。



ゴクリと息を飲んだ。



そして、ゆっくり歩みよると小さなのぞき穴に瞳を合わせた。



丸い穴から見える景色。


おしゃれなインテリア……シックな壁紙。


白いソファに腰かけるユウ。
置かれたふたつのワイングラス。


そして、


ユウの隣で笑う女の人。


ピンクのワンピースに、きらびやかなネックレス。


パーマがかった細く茶色い髪。


そして、長いまつげ、パッチリとした大きな目、形のいい唇、細い首ーー


感嘆した。


想像以上に美人だった。
抜群のスタイル。お化粧まで上手い。


「やだ、おかださんったら」


艶のある髪を揺らして、クスクスと笑っている。


ーー完璧なまでに可愛い……。






こんな若い子がユウに好意を抱いている。


こんな可愛い子が……。



男だったら……放っておかない。


こんな子に誘われたら……ーー
「おかださんと二人でお酒飲めるなんて嬉しい」


「そう言ってもらえるとぼくも嬉しいよ」


「わたし、どうしても……距離を縮めたくて……」


「ぼくも同じ気持ち」


「おかださん……」



見つめあうふたり。


ユウが一歩踏み出した。