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第17話

ユウがわからないよ…
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2018/10/25 13:46
ーーー


昼間、いつものようにメールが来た。


『愛しているよ』


ホッとしたのもつかの間、そのあとにふたたびメールが来た。


『今日は仕事があるから、自分の家に帰って』


がっかりした。


わたしは、ユウに会いたかった。

昨日も会ったけれど、今日も会いたかった。


なのに、そんなメールが来た。


わたしは、会いたかった。

ほんとうにユウに会いたかった。


『わかった。じゃあまた明日』


そう返事すると、自分のアパートへ帰った。


久しぶりのひとりの夜は、静かでとてもさみしかった。


ユウの熱が恋しい。


言葉では言い知れぬ空虚感に包まれながら、眠りについた。
ーーー


昼間、いつものようにメールが来た。


『愛しているよ』


ホッとしたのもつかの間、そのあとにふたたびメールが来た。


『今日は仕事があるから、自分の家に帰って』


がっかりした。


わたしは、ユウに会いたかった。

昨日も会ったけれど、今日も会いたかった。


なのに、そんなメールが来た。


わたしは、会いたかった。

ほんとうにユウに会いたかった。


『わかった。じゃあまた明日』


そう返事すると、自分のアパートへ帰った。


久しぶりのひとりの夜は、静かでとてもさみしかった。


ユウの熱が恋しい。


言葉では言い知れぬ空虚感に包まれながら、眠りについた。
それから、三日間連絡がなかった。


わたしは毎日のようにユウの家へ足を向けた。


インターホンを鳴らしても、出てこない。


暗くなるまで外で待ってみた。


家の明かりがつくようすはなく、人の気配もない。


携帯の着信を確認した。


やはりなんの連絡もない。


肩を落とすと、重たい身体を引きずるようにその場をあとにした。


こんなこと初めてだった。


これまでのユウからは考えられない。


一日に何通もメールが来た。すぐに返さないと、ユウは不機嫌になる。だから、わたしはトイレに立つたびにメールを確認した。
それがこの三日間ぱったりとなくなった。


わたしは、その日バーでひとり飲んだ。


アパートへ帰り着いたのは、午前零時。


携帯は一度も鳴らなかった。



ーー

ーーー


ラブラブな関係。


そんなふうに思っていたのは、わたしだけだったのかもしれない。



もしかして、悪ふざけ?


歯がゆくて悲しかった。悔しかった。


次、ユウに会ったら思いきり問い詰めてやろう。


そう思った。



ーーユウのばか!



ーーぜったいに許さないんだからね。
ーーー


翌日、ユウの家に行った。

インターホンを鳴らすと、あたりまえのように彼が出てきた。


「やぁ、杏奈」


「ユウ」


わたしは、ゆっくりと足を踏み出すと寄っていった。


そして、思いきり頬をひっぱたいた。


ユウがわたしを見る。


ひどく驚いたようすだ。


「杏奈?」


わたしは怒っていた。

ものすごく。



許せなかった。

あっけらかんとするユウに、怒りがこみあげてくる。
仕事が手につかなかった。

今日だって、ミスして上司から叱られてしまった。


それでも、わたしの頭のなかはユウでいっぱいだった。


なんど携帯を見ただろう。


なんどメールを送っただろう。




嫉妬させるためにこんなことをするなら、わたしは許さない。




「ユウ、なんで連絡しなかったの?」


「杏奈」


「今までずっとメールくれてたよね? わたしが家にくるの待っててくれてたよね? わたし、この三日間ユウの家に通ったよ。でも、いなかった。どこにいたの? ねぇ」


わたしは、思いの丈をぶつけた。

それは、悲しみ、怒り。

どれもネガティヴなものばかりでいやになる。

けれど、それが本音だった。
どうして監禁されていたわたしが嫉妬しなくちゃいけないの?

前だってそうだ。

あの受付嬢とセックスする光景を見せられて、わたしはほんとうに辛かった。



こんな気持ちになるなら、ユウのことなんて嫌いになっちゃう。


わたしは、なにか言おうとするユウを睨みつけた。


「ユウ。わたし、もうここにこないからね」

「え、」

「わたしの好きなようにやるから」

「ちょっと待ってよ」


背を向けると走り出した。


「杏奈っ」


わたしを呼び止める声がする。

けれど、振り返らなかった。
ユウなんて、知らない。


わたしだって、自由に行動する権利がある。



嫉妬ばかりする人生なんていやだ。



ユウは好きだ。

でも、嫉妬をさせるユウはきらい。
ねぇ、ユウ。

わたしだって、女の子なんだよ。

他の女の人みたいに、自由に遊んだり、
時々はハメを外したりしたいの。


わかってる?
知らない。

ユウなんか、

もう

知らない。
ユウを平手打ちしたその足でバーへ行った。

知らない男の人から声をかけられた。

愛想のいい人だった。

「君、美人だね。いっしょに飲まない?」

「いいよ」

迷うことなくそう答えた。



わたしだってやりたいようになる。



それから、お酒を三杯のんだ。

男の人から声をかけられる前に、すでに二杯のんでいたので、ずいぶんと酔ってしまった。


わたしは駅まで送ってもらうと、そこで別れた。


「家まで送るよ」

「平気」


同じ会話を何度もした。

男の人は下心があったのだと思う。

たぶんセックスしたかったのではないだろうか。
男の人から逃げるようにして別れたあと、トボトボと家路を目指した。


身体がやけに重く感じるのは、お酒のせいだけじゃない。


ユウの頬をひっぱたいてしまった。


今さら、そんなことが気になった。


謝っても許してくれないだろうか。いや、そもそも悪いのはユウのほうだ。

ユウがちゃんとわたしに連絡をくれていたら、そんなことしなかった。悪いのはユウ。



謝る必要なんてない。



それでも、気になってしまう。

どんなことをされても、やっぱりわたしはユウが好きらしい。



わたしは、立ち止まり携帯のメールを確認した。

未確認のメールはなし。


「連絡なし、か」


憂鬱な気持ちに身を寄せた。

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