第11話

お仕置き
22,816
2018/10/22 12:44
わたしはその日あまり眠れなかった。



身体が熱を帯びて、妙に落ち着かなかった。
ーー……



パシ……バシ。


振り下ろされるムチ。


弾けるような甲高い音が部屋の中に反響する。


「ッ……ユウ」


目を閉じて、ただ耐えるしかなかった。



痛み。


これは、痛みなのだろうか。



ユウ、どうしてこんなことをするの?



わたしのことを愛しているのになぜ?



それほどにわたしを閉じ込めていたいの?



ねぇ、ユウ。



わたしはあなたがわからない。
ーー

ーーー


一日に一度与えられるお風呂の時間。

その時間だけは、自由を与えられる。

手錠も拘束具もない。


わたしはシャワーを浴びたあと、隙をついて逃げ出そうとした。


自分なりに計画を立てて、うまくいけば逃げられるはずだった。


けれど、予想外だったのは、ユウが異常なまでに用心深かったことだった。
お風呂場の通気口を開けた途端、アラームが鳴った。


すぐにユウがやってきた。


驚きのあまり動けないでいるわたしに笑いかける。


「そろそろ脱走しようとするかな、と思ってセンサーを付けてたんだ。役に立ってよかったよ」


「あの」


「ねぇ、杏奈」


「……ユウ」


「わかってるよね」
ユウが微笑んだ。


その笑みに、わたしは凍りついた。




わかってる。


約束を破って、逃走を試みた。


これから、わたしは罰を受ける。




生ぬるい汗により、下着がベッタリと肌にはりついた。


ーー

ーーー
ベッドの上で目隠しされた。


見えない恐怖。


「四つん這いになって」


低いユウの声に、わたしは抵抗するのを恐れた。


じわじわと指示に従った。


目隠しをされた状態で、四つん這いの姿勢をとる。


ーー怖い。


恐怖におののいていると、ユウが耳元でささやく。
「杏奈。わかってるよね」


その言葉にわたしはピクリと肩を揺らした。


「ユウ……なに、するの?」


「んー、なにすると思う?」


「……わからなぃ」


「じゃあ、教えてあげる。……こーするん……だよっ」



鋭い音とともに、お尻に衝撃が走る。
「っ、……ァ」


弾けるような痛みにわたしは身体をそらせた。


ムチによる罰。


それは、屈辱以外のなにものでもなかった。


細くしなやかなムチが、わたしを痛めつける。


バシンっ、バシ……ッ


身体的な痛み。


そして、精神的な痛みもユウは加えた。
ただされるがまま罰を受ける。





初めはそんなに痛くなかった。


ーー耐えれるかもしれない。


抵抗することでもっとひどい仕打ちが待っているだろう。


だから、おとなしく罰を受けて許してもらおうと思った。


けれど、甘い考えだった。


回数を重ねていくうちに痛みを帯びてきた。
ユウはムチで同じ部分をなんども痛ぶった。


そこだけが熱くなり痒くなる。


振るっては、容赦なくあてる。


「痛い。ゆう……痛いよ」


「痛くなかったら意味ないじゃない」


「もうやめて」


「お仕置きは、まだこれからだよ」


ユウは再度振り上げた。
「っ、……ぅ」


なんどもなんども落ちてくるムチ。


「は、……ァ……ぅ、」


四つん這いで目隠し。


「ユウ……」


恥ずかしさと痛みと恐怖の融合。


不規則な音が鼓膜を振動させる。



「ねぇ、逃げられると思ったの?」


「……っ、それは」
「きみはぼくを甘くみすぎだよ」


「っ、……ッぁ」


振り下ろされるムチは止まない。


響き渡る炸裂音。


身体に力が入らない。


痛みと恥ずかしさで呼吸が乱れる。


姿勢が崩れた。


「ぁ……ッ」


「ほら、膝しっかり立てて」
「辛いよ……」


「言うこときかないと、もっと痛くするよ?」


その言葉に恐怖して、わたしはぐっと四つん這いを保った。


お尻がジンジンする。


痛痒い。


もう耐えられない。



「ごめんなさい」


「ようやく謝る気になった?」


「……もぅ……ぜったい逃げたりしません」

「それで?」


「だから、許して……」


「だめ」


止まないお仕置き。


パチっ。


空気を裂くような音は止まらなかった。


「うぅ」


「悪い子は、調教してやらないと」


「っ、痛い」
「仕方ないよね?」


「お願い……っ、もう許して」


パチンッ。


終わらない。


悪夢のようだ。



それからユウは、わたしが泣き出すまでやめなかった。


お尻をなんどもムチで叩かれた。
ごめんなさい、となんども叫んだ。


もう絶対に逃げない、と幾度となく言わされた。


お尻がジンジンする。


痒くて痛くてたまらない。


それなのに、ユウは同じところを執拗に狙った。


「……ごめんなさい……ごめんなさぃ……」


ポタポタと落ちていく涙。
「反省してる?」


「……してる……うぅ……っ、」


「ーーそう。なら、許してあげる」


夜を迎えたころ、ようやく目隠しを外された。


クタクタになったわたしは、気絶するように眠った。


お尻がズクズクと痺れている。


それに、四つん這いになっていたせいで、膝が痛い。



監禁されて、一週間。


逃げ出そうという意欲はすっかりなくなっていた。

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