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ケータ「おばあちゃんっ!遊びにきたよーー!!」
孫と息子と息子のお嫁さんがケマモト村へわざわざ遊びに来てくれた。
私は「よく来たねえ」と言ってから、家へ招き入れた。
一気に家が小さくなったようだねえ。
「…あら」
いつも縁側でぐーたらしたり、たまに出かけている黒い妖怪は、ケータを見るなり目を輝かせた。
「孫だー!」と喜ぶあの人を脳内で想像する。
あの人も、見たかっただろうね、ケータのこと。
「ケータ、7歳になったんだってねぇ。時間は過ぎるのがあっという間ねえ」
ケータ「うん!俺ね、おじいちゃんみたいにかっこいい大人になるの!」
そうケータが言うと、黒い妖怪は嬉しそうにケータの周りをくるくる飛ぶ。
喜怒哀楽が激しい妖怪さんだこと。
メガネの横にはめてあるビー玉から覗いて、笑ってしまった。
「でも、ケータも十分かっこいいわよ?」
いつも、おじいちゃんに言われてたんだもの。
「俺の孫はガッツ仮面並にガッツがある奴だ」って。
「アイツは俺のヒーローなんだ」って。
そんな言葉を素直に受け止めたのか、ケータは嬉しそうにはにかんだ。
「(…まぁそれはきっと、全部あの人の孫への妄想なんだろうけどねえ)」
きっと時を超えて、あの人は孫のことを見たのかもしれない。
だけど、流石に私もそこまで信じるほど純粋じゃないわよ?
くすくすと笑いながら、「虫取りに行かないの?」とケータに訊く。
すると、「行く!」と元気に返してくれた。
玄関に置いてあった虫取り網を持って、外に出るケータ。
一緒に黒い妖怪もついていこうとしていた。
「孫のこと、よろしくね。」
どこからか暖かい風が吹いて、「おう!」と懐かしいヒーローの声が聞こえた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!