ああ、今日も空は青い。真っ青だ。
雲が悠長にとんでいて、俺は雲の形に目を奪われていた。
なんだかあの雲はソフトクリームに似てるな。あれはりんご。
そんなことを考えていると、したから声がしたような気がしてちらっと見た。
紫炎「煌炎、新王が呼んでいたぞ。」
「紫炎…」
新王とはきっとカイラのことなのは知っている。
でも一番驚いたのはアイツの俺の名前だ。
『煌炎』確かにアイツはそういった。
中々誰も呼ばない響きだ、みんなは俺のことをエンマと呼ぶのに。
俺は口元が綻び、アイツの訝しげな顔に笑った。
「ああ、すぐにいく。悪いな、伝達させちまって。」
紫炎「気にするな。あの王は妙にせかせかしているな、暇があるなら手伝えばどうだ」
「俺は暇な時はねぇよ」
紫炎「さっき空を見上げながらぼーっとしていたのは誰だ」
生前…と呼んでいいのか分からないが、昔の宿敵が隣で話しているなんて考えられない。
昔の俺なら恨みに駆られて突っ走っていたんだろう。
それでも俺には運良く止めてくれて、一緒に行ってくれる奴がいた。
俺には“ともだち”がいたんだ。
「お前にも信じられるともだちができればいいな」
紫炎「……ああ。」
シンも、カイラも、ケータやナツメ達も。
今同じ空の下、笑い合っている。
命を精一杯輝かせて、今を生きようともがいている。
そしてそれは、イツキであった俺もだ。
昔の俺も今の俺も、同じ空の下で生きている。
それでも昔の俺なんかよりよっぽど今の方が気楽だ。
ぬらりと色々あってもともだちがいた。
カイラと色々あってもトラブルで得た信頼関係があった。
人生は何が起きるか分からない、人生捨てたもんじゃない。
紫炎「どうした、煌炎」
「…っいや、なんでもねぇ。行くのが面倒だなと思っただけだ」
『俺らは同じ空を見上げている』。
空を見上げて俺は笑った。
さあ、早く行ってやろうか。
生きることを、最後まで投げんな。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!