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ある闇の中。
一点の光が、闇の中を彷徨った。
その光は闇が見えておらず、ただただゆっくりと風に身を任せているようだ。
俺は手を伸ばした。
光は俺の手を照らした。
優しく、あたたかく、やわらかく。
するとその光は目を覚ました。
「……オロチ?」
俺の手は空を切った。
俺は光を見つめると、光は「あれ、オロチじゃない、影オロチか。」と笑った。
まぶしかった。
愛おしい光に手を伸ばすと、光はゆらりと揺れる。
「……あぁ、お前は……」
少しずつ黒く染まりゆく光を見つめて俺は言葉を放つ。
だが俺の言葉は闇の中へと消えていく。
光は俺を見つめて、にこりと笑った。
心があたたかくなるような気がした。
ここは光が来る場所ではない。
俺は下へ下へとぐんぐん降りていく。
光から目を逸らして、暗闇へと。
ぽつり。
光が下へ落ちた。
「…」
安らかに眠っている光を俺は手繰り寄せる。
怖がらせないように、やさしく、あたたかく。
人生を全うしたきみの魂くらいは、抱きしめさせてくれ。
二度と離さないと
これからずっと一緒だと
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。