第11話

妖怪に惚れられし人間②
1,898
2021/07/23 09:05






酒呑童子「おい、起きろケータ」





酒呑童子の声が聞こえて目を開けると、目の前にはイケメン。(酒呑春夜)
いきなりのことで驚いたが、生憎まだ脳は寝起きで発達していなかったので、一応大丈夫。


……次やったら許さないぞ…




「近い近い。…ふぁあ、おはよ…」
酒呑童子「おはようじゃない、今は夜だ」
「だからおはようって………え、夜?」





窓を覗くと夜。
それにここは妖怪探偵団の事務所だった。


起きてるのは俺と酒呑童子だけで、寝ている俺の頭の上にいるジュニア膝の上のジバニャンとボーイ。
そして、床で狸寝入りしている妖怪探偵団達。




「えっナツメさん達起こした方がいいよね?親も心配するし…」
酒呑童子「それなら大丈夫だろう。今日はここで泊まりらしい。」
「…てか俺も帰らないと!!」



酒呑童子「大丈夫だ、お前がここにいる間、現代の時間はここよりゆっくり進む。」






…まあ、酒呑童子が言うならそうなのかもしれないけど…


そう思いながら、「そうなんだありがとう」と素直に受け止めた。
すると、酒呑童子は、困った顔で「あのなあ…」と苦言を漏らす。






酒呑童子「簡単に俺ら妖怪の言うこと聞かねえ方がいいぞ?」
「え、でもみんな良い人じゃん。信じるなって方が難しいよ」
酒呑童子「……あんまそう言ってると、殺されるぞ」




「こっこっこ、ころ!?ピッコロにされるの!?」
酒呑童子「おー、ピッコロだぞ、一瞬でな」




謎の言語(ドラゴン○ール)で言葉のキャッチボールをする俺と酒呑童子。
俺と酒呑童子はなんだか面白くて笑ってしまった。


その笑い声で起きたのか、みんながぞろぞろと起き出した。






アキノリ「んお?うおっ、いつの間にか寝てたな…ってもう夜!?」
トウマ「今日泊まりで良かったね…ケータは大丈夫?」
「うん!今俺が未来にいるから、俺の住んでる世界はゆっくり進むんだって!」



酒呑童子「まあ、今はまだ昼だろう。明日の昼ごろ戻れば丁度夕方のはずだ」




ジバニャンとジュニアも起こして、ボーイも起こす。
ゆっくりと起きて、脳が覚醒したのか、一気に元気になる。


いや元気だなあ…






「あれ?ナツメさん、なに携帯見てニヤニヤしてるの?」
ナツメ「へえっ!?いや、なんでもないよ!!」





………まあいっか。

俺は夜だし妖怪いっぱいいるかもな〜と思い、玄関に出る。
するとジバニャン以外予想外だったのか、「どこ行くの?」と訊いてくる。



ジバニャンは「はあ?」みたいな顔で返答した。



ジバニャン「当たり前ニャン、夜の散歩ニャンよ?いっつも行くニャンけど…みんな行かないニャン?」
「夜しか会えない妖怪とかいるし…行かないと家に直接来るから困るんだよね」




みんな((流石………))





それじゃあ行ってくるねーと言うと、ストップがかかる。
酒呑童子が「お供する」と言って、俺の背後にいつの間にかいた。


妖怪探偵団のみんなも行きたいとせがんできて、ジュニアやボーイも行きたいらしい。


そんな面白いこともないけど……






「未来の妖怪に会うの久しぶりだなー、誰に会うかな?ジバニャン!」
ジバニャン「ひも爺とかふぶき姫とか…もしかしたら大ガマとか土蜘蛛かもしれないにゃんね!」
「ええー、それはちょっと嫌だな〜」





大ガマって結構俺に引っ付くんだよね…土蜘蛛はいいんだけど女郎蜘蛛が…うぷ…
蜘蛛の糸ぐるぐる巻きにされてなかなか抜けないんだよね…あれほんと大変なんだよね…


俺は苦笑いしながら、妖怪探偵団の事務所を出_






カイラ「やはりここにいたか!!」



ピシャンッ



無言でドアを閉めて鍵をかける。後ろでは少し怯むみんな。
俺は冷たいオーラを放ちながら、みんなの方を笑顔で見た。





「よし、今日は歩くのやめようか!」
ジバニャン「よ、容赦ないニャンね…あ」


カイラ「俺は王だぞ?鍵をかけて入れないとでも思ったか」



「………よし、じゃあねカイラ!!」




急いで鍵を開けて、普通の速さで普通の走り方をして走る俺。
ちょっとこれはやばくないですかね!???!

普通の人間vs妖魔界の王とかもう勝者わかりすぎててやばいんですけど。



とりあえず物陰にでも……




「あ、あそこ…」





とりあえず公園の遊具の近くに隠れる。
今は夜だからちょうどいい。あー夜でよかった…


俺はキレた息を殺しながら、カイラが通り過ぎるのを待っていた。






大ガマ「お?ケータじゃねぇk((「ちょっと黙って!!(小声)」




急に現れた大ガマの口を抑えて、急いで遊具の影に入れる。
大ガマのせいでバレたら俺一生大ガマを恨む自信しかない…!!

そんな俺のドキドキとは裏腹に、大ガマは何故か勘違いしたようだった。





大ガマ「なんだ?そんな急いで…俺のことそんな入れたかったのか?」


「ごめん意味わかんない…ってそれどころじゃないの、カイラが俺のことおいかけてるの!」
大ガマ「カイラって…蛇王カイラ様のことか?お前…妖怪タラシにも程があるだろ…」



そんな会話をしていると、サッと草を踏む音がして、ガクガクしながら覗くと……
案の定、ふわふわの毛を斜めにつけている彼の姿があった。


………人生終わった?






カイラ「見つけたぞ、ケータ…何故逃げる?」


「いやいやいや逃げるでしょ、逃げない人いる?もうやだ…」
大ガマ「……わりぃな王様!俺もコイツが好きなんでな、逃げさせて貰うぜ?」





そう言って大ガマは俺のことを抱き上げると、ものすごいジャンプ力で家の屋根に飛び乗った。
やばいやばい!!ここから落ちたら俺死ぬよ!?

俺は必死に大ガマにしがみつくと、大ガマはめちゃくちゃ満更でもない顔をしていた。

その様子を見たカイラは殺気をぶしゃあああっとわかりやすく出していた。








大ガマが一つ一つ屋根から屋根へと移っていると、その背後をカイラ様が追いかける。
その異様な状況に興味を持った妖怪が来ては、大ガマの胸の中に俺がいると知って、大ガマに手を貸す妖怪も多々いた。

………なにこれぇ…








ふぶき姫「そこの蛙!この氷の道を通りなさい!!!」


コマさん「あの蛙妖怪が通ったらわたしがこの氷を溶かしてやろう」
土蜘蛛「ケータを守る為ならば…糸がらめの術!!」







大ガマ「…な、なあ…お前さ、タラシとかじゃなくてもう意図的?」
「ごめん、俺もよくわかんない…」




そんなこと言っていると、刃が飛んできた。
このままだと大ガマの心臓に刺さってしまう__


が、大ガマもSランク妖怪だ。こんなのでやられる奴じゃない。


さらっと避けたが、その反動で、俺を落としてしまった。









………あっ俺死ぬわ。フウ2になってみんなまた会おうね。





「うわああああああ!!!!あ、あ……あ?」





これ、どっちかっていうと俺、吸い込まれてない?
誰かの手で地面に吸い込まれるような………



って、それもやばいじゃん!!幽霊!??





「うわっ」




叫ぶ暇もなく俺は、地面の中へと吸い込まれていった。















______
__












「いっててて…あれ、ここは?」





見覚えのない、真っ白な世界。
キョロキョロと周りを見渡してもなにもない。


…が、遠くにひとつ、小さな影があった。






俺はそこを目掛けて走っていく。






「…ね、ねえ、君、どうしたの?」





そう訊くとゆっくりと俺の方をむいた。
たしかに見覚えのある背中だなとは思ったけど…







「…空天?」
空天「君は…確か、朱夏様の生まれ変わりの…」
「そ、父親…らしいんだけど、俺もよくわかんないんだ。」





へへっと笑いながら「隣いい?」と訊くと、「どうぞ」と笑顔で返ってきた。
あの頃の空天…もとい空亡とはまるで違うな…

まぁそれは当たり前か。あれは怨みを溜めに溜め込んだ妖怪なのだから。






空天「…わかるぞ、未来とか、見えないものはわからないよな」
「そうだよね、…でも、俺みたいな奴がナツメさんとかの父親って、なんだか夢みたい」




妖怪ウォッチを持って、世界を救うナツメさんと妖怪探偵団のみんな。
妖怪探偵団の一員であるナツメさん…とケースケ?くんを育て上げた未来の俺。


もう未来の俺すごすぎだよって思う。





「でも未来怖がってたってダメだよね!怖がってたってどうせ来るんだし!もう素直に受け止める!」
空天「ははっ、すごいあっさりだな、…君はすごい」




意味がわからなくて、「え?」と聞き返す。
すると、空天はくすりと笑って、話してくれた。




空天「君は人間だ。それなのに沢山の妖怪と友達になり、その妖怪からは絶大な信頼を置かれている。…いや、もはやあれは友情なのかわからないがな。それまで友情を育んだ君は凄い。未来に希望を持ち、一生懸命前を向いているだろう?…俺には到底無理だ」



「どうして?」






そう訊くと、にこりと哀しげに笑った。そして、「…怖いんだ」と言った。
前に生まれ変わる時にまた自分の闇に染まってしまわないか心配だと言っていた。

その時はナツメさん…いや、朱夏さん達と戦い、闇を乗り越えたことを教えたはず…





「…でも、何が起きるかわからないってウキウキしない?」


空天「えっ」


「何が起きるか分からないから面白いじゃん!それに、また空天が暴れたら、俺達が戦う!!」





そう言うと、空天は少し驚いてから、「…そうか」と笑った。
俺は空天に少しでも未来が見えたなら嬉しいなと思って、俺も笑った。

そして、空天は言葉を続けた。





空天「君は本当にすごいな、これは大物だ。…君が妖怪達にあのような感情を持たせる理由が分かるよ」
「えっなにそれどういうこと!?気になる!」
空天「ははは、ちょっと近いよ」




そんな感じでわいわいやっていると、背後に気配を感じて振り向く。
空天も何か感じ取っていたみたいで、俺と一緒に振り向いていた。

あ、あの妖怪は_____






「朱夏!?…様、と玄冬様と白秋様!?」
空亡「な…!!」



朱夏「空天のとても楽しそうな声が聞こえてのう。気になって来てしまったんじゃ」
白秋「誰と話してるのかと思えば妖怪探偵団の奴じゃねえか!」
玄冬「確か…ケータくんか。朱夏様の生まれ変わりの父親…」




(大体)初対面の妖怪達にテンパリながらも、隣の空天をちらりと見ると、口をぱくぱくして顔が真っ赤だった。
なんか鯉みたいだな…かわいい


なんて言えば怒られるのは分かってるから、笑いながら見ていた。






朱夏「ケータと言ったか。妾、そなたと話してみたかったのじゃ!話そうではないか!」
「俺なんかで良ければ!あ、隣どうぞ!!」


玄冬,白秋((さりげない…!!!))



朱夏様が隣に座り、俺の右には空天、左には朱夏様というなんとも凄い光景。
俺はこの状況下で、「なんでこんなことに…」って思いながらも話に耳を傾けていた。





朱夏「そなたは“ようかいますたー”と呼ばれておるのだろう?どんなことがあったんじゃ?」

「うーん…俺、別に凄いことはしてないんだけど…」
空天「そうか?俺が空亡だった頃…君が他の事件でとても活躍していた話を耳にはさんでいたが」




………余計なことを…!!!
って思いながら空天を見つめていると、キラキラとした期待の視線が俺の体にチクチクと刺さった。

俺は朱夏様の方を見ると、「聞かせて聞かせて」というオーラを感じ取った俺は話を進めた。




「ウバウネっていう妖怪がいてね…ソイツが桜町っていう町を乗っ取ろうとしてたんだ」




怪魔という存在や、タイムスリップした経緯、タイムスリップした先で出会った俺のじいちゃん。
そしてじいちゃん達と一緒に戦って倒したウバウネと、ウバウネの過去。

それを話すと、朱夏様や玄冬様、白秋様はたいそう興味津々の様子だった。





白秋「他は!?なんかねえのか!」
「え?えっと…あ!ゴゴゴゴットファーザーっていう妖怪と対峙した時もあったよ」




USAに行った時に出会った少年マックと、UFOの存在。
日本ジャポンにいた妖怪ウォッチを持つイナホさんの話。

そして、ゴゴゴゴットファーザーの狙いと手下のインジャネーノの話。
ゴットファーザーを倒す時に手を組んだバスターズと妖怪ヒーローの話。



そして最後にUFOに乗って、ゴットファーザーと戦った話。




朱夏「ゆーふぉー…なんと摩訶不思議なものなのじゃ…!」
空天「空の空へ行ったのか?それはすごい…ロマンがあるな」


玄冬「UFO…確か未確認飛行物体だろう?異世界の者が乗っているのだろう?」
白秋「すげえ!なんだそれ!ケータ、他は?他にはねえのか!」




せがみすぎだから…
そう苦笑いしながら、空飛ぶクジラの話をした。


それを聞いたみんなはその話題でわいわい盛り上がってからまたせがんできたので、
「これで最後だよ」と釘を刺し、俺が妖怪になった話をした。







朱夏「素晴らしい…妾は感動したぞ…天野ケータ!お主は素晴らしい人間じゃの…」

白秋「おおう!俺も…俺も感動したぜ…!人間と妖怪の絆…美しいな…!!」





空天「…悪いなケータ…あの二人はどうも純粋でな」
玄冬「ははは…でも感動するのはしょうがないよね。」



色々あるんだなあと思いながら俺は苦笑いした。
それから、朱夏様が「様付けしなくていいぞ」と笑っていってくれたので、「うん」と言った。

するとそれに続いて、玄冬様と白秋様も言ってくれたので、甘えることにした。

空天がちょいちょいと俺の肩を指で突いて来たので、そちらを見た。





空天「なあ…最初から俺そういえば様付けじゃなかったよな?」
「え…あー…あはは、ごめんて…」
空天「…まあいいけどさ…あ、そういえばケータはどうやってここに?」




そう訊かれて俺はぎくっとした。
妖怪に…しかも今の妖魔界の王様に追いかけられてたなんて口が裂けても言えない。

絶対に、絶対に言えない…





玄冬「ケータのことだ。妖怪を常日頃から誑かしているから追いかけられてたら迷い込んだんだろう」





バレてるし…!!!
てか俺誑かしてないし…………たぶん…




「その通りです…でも!みんなに会えたから、良かったな!!」







・・・








「え?どうしたの、俺のこと見つめて……」




白秋「〜〜〜ッ!ケータ好きだーーー!!!!」
朱夏「ケータ…それを誑かしていると言うんじゃ…妖怪が惚れる原因はこれじゃな…」
玄冬「…………(かわいい)」
空天「……はあ」





俺はみんなに向かって苦笑を漏らしてから、「そろそろ帰らないと」と言うと、みんな淋しそうな顔をした。

俺はなんとなくその顔に抗えず、「うっ」と声を出してしまった。
すると、隣にいた空天が少し俯いた。そして、俺の方を見て、




空天「良かったら、また来てくれ」
「え…どうやって来ようかな…」
白秋「ま、空天レベルになると、ケータが寝てる時に夢の中にでも出てくるだろうな!」



朱夏「!ないすあいでぃあ、じゃ!妾もその時は遊びに行こう!」
玄冬「ああ」



俺は「それじゃあ、また会おうね!」と笑うと、みんなが笑顔で返してくれた。
段々と辺りが暗くなって来て、みんなの姿が霞んで見えて来る。

白秋の「またなー!!」という元気な声も、最初はハッキリしていたが段々小さくなる。






視界が真っ暗になり、何も見えなくなった。












______
___















「〜〜〜〜!!!!!」






目が覚めて、目を少し開けると誰かが喧嘩しているようだった。
触り心地から、此処はベットのようだ。

起きあがろうとしたが、すごい言い争っていたので取り敢えず寝たフリをしといた。





ナツメ「あんた達妖怪のせいでしょ!?お父さん死んだらどうするのよ!!」


カイラ「いやこれはこの蛙妖怪が落としたのが悪いであろう!!」
大ガマ「それは聞き捨てならねえな、追いかけてきたオーサマが悪いんだろ!!」





アキノリ「ナ、ナツメ?まぁケータもすぐ目覚ますって言ってたし、まあいいじゃねえか…」
トウマ「かれこれ4時間は説教してるよね…」





ナツメ「あんた達なめすぎ!!お父さんの偉大さがわからないのよ!!!」







…………俺は、












俺はいつ起きればよろしいのでしょうか。










「(はあ…なんかもうめんどくさ…)」









俺は寝たふりをしていたが、とうとう本格的に寝ようと思い、寝始めた。

























(あれ、ケータ寝てねぇか?すんごいぐっすりだけど…)
(寝言で空天って言ってるし…なんの夢みてるのかな)





(お父さん起きたらあんた達土下座しなさいよ!!)

((娘こえぇ…))




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なんだこれ(7100文字)

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