第18話

衝撃②
940
2021/07/27 00:39
続けるつもりありませんでしたが…続きます(笑)
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ポストに入っていた手紙を少し読んでからすぐに捨てる。
もう最近は字面だけでわかってしまう程になっていた。

俺はゴミ箱に積まれまくる紙を見つめてため息を吐く。



すると風呂から上がったイツキがタオルを首にかけながら俺の方を見た。






イツキ「……なぁ、シン…お前さ」


「ん?」




イツキは俺の目を見てから少しギョッとした。
そして、ぽろぽろと涙をこぼし始めたのだ。

俺はあまりに急な出来事に驚いてしまう。





「ど、どうしたの、イツキ…」

イツキ「なんでもないんだ……なんでも…ッ」





イツキは震えていた。細かく、はやく。
俺はどうすればいいのかわからず、「どうしたの」しか訊けなかった。


イツキは無理矢理笑って、「なんでもない」と言った。




「そっか」










____イツキside











気付いている。


シンは生まれ変わるべき人間なのだと。
でも、俺の為にひとりでここに残ってくれて、俺が生まれ変わるまでいてくれるつもりなのだと。



俺は純粋に嬉しかった。


それでも、シンが変わっていくのが怖かった。





閻魔離宮の書斎で読んだことがある。


『生まれ変わることを拒否するあの世の者は消される』と。
つまり、存在が消されて、生まれ変わることができないと。

そして、目の前のシンは、足が消えていた。


ゆっくりと、今も消えていくのがわかる。
これだと一ヶ月もしないうちに消えてしまうのだろう。






「……っ」






俺は嬉しかったんだ。



俺のことをずっと待っててくれて。
こんなに待ってくれたシンと、俺は……


俺は、シンと一緒に、この世界で遊びたかった。




俺とシンが一緒に入れたのは約1週間程度だ。





…いや、約1週間しか一緒にいないのに、ずっと待っててくれるシンって……







「……シン」






俺はシンのことが大好きだ。






もっと一緒にいたい。








シン「?どうしたの、イツキ」







視界がぼやけて、目元が熱くなる。
俺の身体が、シンが消えるのを拒んでいる。


……俺だって嫌さ。




ずっと、一緒にいたい。




やっと、会えたって言うのに。









「……お前は、もう、…生まれ変わってくれ………」








でも、大好きだから。


お前と一緒にいたいから。






消えてほしくないから…




そんな、切実な願いだった。



俺の言葉を聞いたシンは、俯く俺の頭を優しく撫でた。
それから、いつもの明るいハイトーンな声で、俺の名前を呼んだ。







シン「……イツキ、ひとりで寂しくない?」


「……寂しい。…けど、お前が消えるのは、もっと、嫌なんだ……」






崩壊する妖魔界と、真っ赤に染まる視界。


あんなに絶望する景色は今まで見たことがなかった。
死ぬ間際の走馬灯は、シンとタエとの思い出と、





シンの墓の姿だった。







シン「イツキ…」


「姉ちゃんも、親父も、母ちゃんも、…妖魔界も喪ったんだ、俺は……」







俺は全てを失った。失った俺に残されたのは、ずっと待っててくれたお前だけなんだ。
そんな優しいお前を、心の中で“イツキ”を生かしてくれたお前を、俺は…


俺は……!





「生まれ変わるには、良い事すればいいんだろ?俺、めっちゃ頑張る。頑張るからさ……」






俺の途切れ途切れの言葉をシンはゆっくり頷きながら、俺の目を見ながら聴いてくれた。
優しい眼差し。柔らかい小麦色の肌。蒼く輝く髪色。

シンはいつまでも変わらないのに、俺はすっかり変わってしまった。




変わらないことがこんなにも嬉しいことだなんて知らなかったんだ。







「だから、生まれ変わったらまた、遊んでくれるか?」





その言葉を放った瞬間、シンは俺に抱きついた。
俺はあの丘の上で久しぶりに会った時みたいに、シンの肩で泣きじゃくった。


シンは背中を一定のリズムでぽんぽんと押してくれた。




暖かかった。太陽のように。







シン「もちろん、いっぱい遊ぼうね」







その言葉と共に、俺が流した涙じゃない水が俺の頬に伝った。
水の存在に気付いた瞬間、俺がシンを抱きしめていた手は空を切った。

代わりに、きらきらと輝いた光が俺の周りを包んだ。










「××………」















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__













ジンペイ「今日はなにしよっかな〜♪」
コマくん「そうだね!ぼくは__」







とある街の大きな学校。


Y学園という学校は、とても有名なエリートクラスの学校と言われている。









「………」






今日はまたおかしな夢を見た。


青い髪の男の子を俺が求める夢だ。
彼は必ず夢の最後には消えてしまい、俺はそれを受けて必ず泣いてしまう。



ゆめのなかで何度も何度も名前を呼んで、その名前を呼ぶと安心感を覚える。
そんな心友しんゆうのような名前、忘れるはずもないのに。

何故か、これは夢の中限定のようだ。







少し疑問を抱きながら、Y学園の校門前でY学園を見上げていると、どこかから声がした。









__“「…イツキ?」”









「……お前か」






お前か。夢の中で出てきたのは。



少年は、俺に向かって「久しぶり」と笑った。
俺も笑って、「おう、久しぶりだな」と笑った。




少年は、Y学園の制服を着ていて俺は少し驚いた。
それから、「Y学園入ったのか?」と訊くと、「うん!」と元気良く答えた。

久しぶりの声に、俺の心は満たされていくのを感じる。





「なんで入ったんだ?お前ならもっと…」







………あ、そういうことか。




俺は途中で言葉を止めてから、「なんでもねぇや」と言う。
それから少年は、ジンペイに見つかり、肩を掴まれる。





ジンペイ「行くぞ、“シン”!!!」
シン「え?あ、うん!」








「……シン…か」























今日の夜は、どんな夢を見れるのか楽しみだ。


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イツシンは生まれ変わっても一緒にいて欲しい…(Y学園イツシン出ろよ!!!)←

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