第23話

カイブツ
864
2021/07/30 16:29
妖ケー含みます
_______



















未来へ繋がる扉を通ると、いつも通り公園に辿り着いた。
子供達の騒ぐ声、蝉のうるさい歌声、車の走る音。


俺は空気を大きく吸うと、前を向いた。






ガクリ。







視界が下にいきなり向けられると、一瞬で視界は暗くなる。
そして前を向くと__






「夜…?」




月が輝き、星が散りばめられている星空が目の前には広がっていた。


涼しい夜風が俺も頬を撫でる。
誰の笑い声も聞こえなくて、車の走る台数も少なくなっていた。





俺は疑問に思いながらも、折角来たのだからと未来の街を堪能することにした。










サクサク



サクサク





「……」






ペタペタ



ペタペタ





「……っ」







そういえば今日、おとも妖怪つけてないな…



夜道は怖い。
幽霊とか、そういうのは信じないけど。




でもやっぱり夜道とか、暗くて先が見えないものは誰だって怖い。







コツリ。




そんな革靴がアスファルトを強く踏むような音と共に、俺の体に衝撃が走る。






「うわぁっ!?」





掴まれて空へと吹き飛ばされる。


それからのせられたのは、大きな蜘蛛の背中。
蜘蛛の隣には大きな蛙もいて、俺は驚きを隠せなかった。




でも俺は妖怪に慣れている部分もあり、免疫はある程度ついている。








「な、なんだよ、この“バケモノ”…!!」




そんな声がしたと思ったら、蜘蛛はぱくりとニット帽を被ったいかにも怪しい男を食べてしまった。
俺はそんな衝撃映像を目の当たりにしてしまい、そちらに衝撃を受けた。

てか誰!!その男の人!!てか君達妖怪も誰だ!?




俺は心の中で騒いでいたが、蜘蛛は「グルルル…」と鳴いてから、俺を地面へと降ろした。







俺は蜘蛛と蛙を見つめる。




どちらもとても綺麗な瞳で、優しい想いが奥底に眠っているように感じた。
俺は蜘蛛と蛙の顔だけを抱きしめてから、こう言った。






「バケモノなんかじゃないのに、酷いね。君たちは全然…」





そう言うと、ぽつりぽつりと大粒の雨が降ってきた。


生憎今日はかっぱを持ってきていなかったので、俺は現代へ帰ろうとした。
でも、俺のところにばっかり雨が当たって、ほかの場所には当たっていない。



俺は見上げると、蜘蛛と蛙が泣いていた。





「ど、どうしたの?」







___“アァ、暖カイ…”





「えっと、助けてくれてありがとうね、あれもしかして不審者だった?」






___“何故ダ”






「ふふ、嬉しいなあ。ねぇ、君達なんて名前なの?」





___“ナンデ、コンナニモ…”







ボフン。





そんな音を立てて、蜘蛛と蛙は姿を変えた。
ライトサイドではなく、彼が知っている姿に。








「……土蜘蛛?大ガマ?」







ああ、何故、こんなにも。








こんなに俺らは喜んでいるのだろうか。











土蜘蛛「…悪いな、ケータ。」
大ガマ「俺ら、お前のこと忘れちまうみたいだ」




忘れたくないのに。







「………そ、っか…」





ケータは悲しそうに顔を伏せる。

すると、ぱっと前を向き、大将2人に向かってにぱっと笑った。






「それじゃあまた、友達になろうね!」











ああ






















“ばけもの”め。

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