第22話

ゆらりりらゆ
910
2021/07/30 16:11
死ネタ含む……かな?
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ゆらり、ゆらりと煙が空を舞う。







その煙は泣き崩れる彼らの周りを包み込む。
煙の匂いは少し焦げ臭くて、妖怪達は後ろへ一歩足を引いた。



だが、みんなその匂いすら堪能している。





大嫌いで、匂いを嗅いでいれば昇天してしまいそうな香り。







何故、彼が死ななければいかなかったのか。
何故、彼が死んでしまったのか。



これこそ妖怪のせいになれば良かったのに。








「(人間の欲が人間を殺してしまうなんて)」





少女は涙を流して止める様子はなかった。
少年は彼のもう見えない背中を見つめて泣き崩れていた。





ゆらりと揺れる煙は、何度だって彼らを包み込んだ。










ジバニャン「………アイツなんか、知らないニャ」






そっぽを向きながら、「知らない」の一点張りの猫妖怪。



彼は過去の記憶がなく、生前の飼い主のエミちゃんのことは思い出したくせに、ケータ君のことは覚えていない。思い出す様子すらない。





なのに、何故彼は声が震えているのか。







答えは明るく照らされていて、訊く必要もなかった。









「これは…火葬の煙か、それとも、線香の煙か……」
「さあ、どうなんでしょう。」







参列していたえんらえんらは少し顔を歪めてから、ぽつりと言った。








『とても、あたたかい。』




















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目が覚めると、いつも通りの天井。



少し早い時間。
障子から漏れる朝風は私の頭を冷やしてくれた。




ああ、またあの夢か。





ゆっくりと起き上がると、庭へ出てから、平釜平原へ出た。

誰も起きていなくて、朝の空気は私が独り占めができた。
ゆっくりと青色に染まりつつある空を見上げると、まだ少し星が出ていた。








「………」






あの夢を見ると、彼が愛おしくなる。



彼を抱きしめてあげたい。彼を、優しく__








「……やさ、しく…ねえ」

















夢を見た。





愛おしいあの子がしんでしまう夢だ。


あの子は暖かくて、柔らかくて、優しかった。
嫌な顔ひとつせず、私の顔を見て笑ってくれた。



彼の魂は煙ではない。


空へゆっくりと消える訳でもない。









また、同じ夢を見た。















これでずっと一緒にいれるわね

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