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第21話

٭
「優月がプールの飛び込みに失敗した時、違和感を覚えたんだ。」

「君は水が怖いんだろ?」




それ以上僕は何も言えなかった。

続けることに戸惑いがあった。




彼女は静かな声で、ぽつりと話し始める。


「そう、みたい。」


「私が·····死んじゃった、日。

潮が引いていたの。いつもなら沖の場所が砂浜になっていて、歩いて行けた。

それはまるで、もうひとつ島ができたみたいに。」

「そこまで行ってね、ただただ空を眺めていたの。

君が来ないことはもう、なんとなくわかっていたから。」



だが、それはいっときのできごと。



「だんだんと潮が満ちてきて、私が歩いてきた道が消えた。」


「泳ぎには自信はあったけれど、私がいた砂浜の島から海岸まで少し距離があった。

どうしようかと困っていた次の瞬間、波が私を海へ引きずり込んだ。」


呼吸をしようとすると、高波が襲い、彼女の悲鳴もその渦にのまれた。





苦しくて、苦しくて。





「陸斗。」


波にかき消されるほど小さな声で、彼女が僕の名前を呼んだ。


「私、こわかった。」


小さく泣いていた。


涙だけがひと粒滑り落ちる。


「君はこのこわさから守ろうとしてくていたんだよね。」

真っ黒な瞳で、僕をじっと見つめていた。

「だから私は陸斗に感謝しているよ。この事故も、陸斗のせいじゃない。」


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柚季 栞音 __ ゆずき しおね
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第21回プリコン応募作品「モンブラン」 チャプター数が多くなることが予想されます。あらかじめご理解ください。 オリジナル小説を書いている方とお話したいです。
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