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第17話

XVII
僕は結局あの場で本について尋ねなかった。

ネガティブな考えばかりが頭の中をまわり、勉強が身に入らずこのままでは色んなところに悪影響だと感じた。

とはいえ切り出すタイミングがただつかめなかっただけなのだけれど。

夕方、図書館の出入口にある階段を下りながら、ややうつむきがちに、早足に歩く。

「優月」

隣をみず、声をかけると「なぁに?」と間延びした声が返ってきた。

しばらくためらってから、喉元に引っかかったまま疑問を取り出す。

「勉強してる?」

「もちろん!難しいけど、A判定欲しいから頑張ってる!!」

今度は質問を変えた。

「君は何について勉強をしているの?」

「政経倫理とか、現文とか?」

「今日は何について勉強したの?」

「政経かな?」

ウソだ。

そんな問題集や参考書なんて入っていなかったのに。

「どうしてそんなこと聞くの?」

警戒するような硬い声が、淀んだ空気にピンと緊張感をかもしだす。

優月は空を見て、何かを考えているように見えた。その間も、胸元の小さな青を指の先でつまんでいる。

やがて彼女は「もうそろそろだもんな」とつぶやく。

僕にはその言動の意味が理解できなかった。

「ところで、私から質問してもいい?」

と、優月は言った。

「君は私のリュックの中を見たんだね?」

僕は顔をしかめて、そっと頷く。

「·····ごめん。」

「別にいいよ。」

予想に反して、彼女は笑っていた。

僕の嫌いな笑い方をしていた。

それはあまりに人工的なのだ。

綺麗な顔で笑っているのに、感情が読み取れない。その笑顔に、説得力がない。

「私が持っている本について知りたいんでしょ?」

そのままの笑顔で嬉しそうに首を傾げてみせた。

彼女の真意が読めなくて、僕は眉をひそめた。

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柚季 栞音 __ ゆずき しおね
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第21回プリコン応募作品「モンブラン」 チャプター数が多くなることが予想されます。あらかじめご了承ください。 オリジナル小説を書いている方とお話したいです。
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