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第1話

7月23日
セミが鳴く少し前の時間。

今朝は空気が澄んでいて、雲ひとつないまっさらな空が、絵に書いたような気持ちのいい一日の始まりだった。

あと三日で夏休みが来るせいか、すれ違う学生達の表情もどこか嬉しそうだ。きっとプールやキャンプ、部活と楽しい予定が詰まっているんだろう。

ワクワクが隠しきれていないくらい、緩んだ頬。それが、憎たらしいほど幸せそうで。

僕もかつてこの人たちと同じ、喜びを隠し切れない顔で、心の中でアップテンポな曲が頭中を駆け巡っていたんだ。きっと。

一昨年、までは。

今の僕に楽しみなことなんて何も無い。

夏休みなんて一生来なくてもいいくらい、必要ないものだ。下を向きながら重い足取りで、前へ、前へと横断歩道を進んでいく。

なんの期待もない未来。

意味を持たない毎日。

決して戻れない過去。

必然的に思い出されるあの夏。

どれだけこの生活に慣れようとしても、日に日に虚しさが増していく。

目に映るのは色のないモノクロの世界。たとえどんな綺麗な絵の具で上から描いたって、黒が混じれば美しさは奪われてしまう。

美しかった色はやがて黒に染まることを余儀なくされる。闇に突き落とされたみたいに、目の前が真っ暗で何も見えないのは、僕だ。

どこを目指し歩けばいいのか。

自分の指先さえ見えないなか、歩くことに意味はあるのか。
なんて、ひねくれたことばかり。

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柚季 栞音 __ ゆずき しおね
柚季 栞音 __ ゆずき しおね
更新が少し遅れてしまうと思います。気長に待っていただけたら幸いです。 オリジナル小説を書いている方とお話したいです。
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