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第2話



あの時、溢れてしまった涙が、僕の頬を滑り落ちて行く事さえ許せなかった。




人通りが多い駅の東口。甘ったるい匂いのするパン屋前に差し掛かった時、不意に左の手首を誰かに掴まれた。

僕は頭をゆっくり上げて、イカリをつけたように重い身体で振り返る。

電車が来るまであと一分。

長い階段を駆け上がるのに、四十秒。

昨日もお年寄りの男性に乗り換えについて聞かれ、いつもの電車に乗れず、チャイムと同時に教室へ駆け込んだのだった。

別に人に親切にすることに抵抗があるわけじゃない。でも二日連続、学校までの道を走るなんてそんなの嫌だ。

不機嫌さを隠さず鋭く相手を見た。

「おはよ。陸斗。」

にこりと目を細めるのは薄い水色のシャツを着た、スポーツブランドのリュックを背負っている女の子。

潮風でふわりと揺れる髪。

僕よりほんの少し低い目線。

クリっとした丸い目。

綺麗に通った鼻筋。

笑うとえくぼができる頰。


そんな、まさか___________。


思わずハッと短く息を呑む。


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柚季 栞音 __ ゆずき しおね
柚季 栞音 __ ゆずき しおね
更新が少し遅れてしまうと思います。気長に待っていただけたら幸いです。 オリジナル小説を書いている方とお話したいです。
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