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第9話

IX
優月の顔からは上手く表情が読み取れなかった。ただ、ふわっと優しく抱きしめてくれた。

「今、目の前に優月がいても、僕は、不安なんだ。

あれは夢だって信じたつもりだけど、優月がどこかへ行っちゃうんじゃないかって·····。僕の隣から消えちゃうんじゃないかって·····。

思ってしまう·····。」

語りかけるようにじっと僕の目を見つめていた。



「·····そんなことないよ。」


優しい優月の声が波の囁きと共に耳へ流れてくる。


「僕は·····、弱いんだ。君がいない世界は、色を失うようだった。」


眉毛の端を下げながら僕の髪を撫でる。


「ごめんね·····。」


何故か謝った優月は僕の体をさっきより強く抱きしめる。

僕はそれに甘えるように、ぐしゃぐしゃに濡れた顔のまま、優月のシャツの胸元に頭をうずめた。

優月の温かさと鼓動が伝わって、安心できた。

オレンジ色が、水平線から見えなくなっても、背中に回した手をほどけなかった。


もう、どこへも行かないで欲しくて。

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柚季 栞音 __ ゆずき しおね
柚季 栞音 __ ゆずき しおね
積み重ね、適度に。 オリジナル小説を書いている方とお話したいです。
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