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第3話

III
 今日と同じような、いつかの青い季節。


『おはよぉー。りっくん!わたしね、りっくんにいいものあげるよぉ~。』


僕とおそろいの水色のスモックを着て、通った幼稚園。ニコニコしながら手を差し出してチョコレートをくれた君。


『陸斗、大好きだよ。』


まだ、セーラー服と学ランを着ていた頃の僕たち。真っ直ぐ目を見て手を握って、意気地無しの僕に告白してくれた。

僕は何度もその手の温もりを思い出して、手探りのままさまよい続けていたのに。

「な·····んで·····いるの。」

どうして僕の前で微笑んでるの。

どんなに追いかけても僕の手は届かなかったのに。どんなに願ったって触れることの出来なかったはずの手。

何故か今、しっかりと僕を掴んでいた。

「いつも一緒に学校行ってるじゃん。今更どうした?」

彼女はアホだなぁとクスクス笑う。その笑い方や、話し方、まるであの日に戻ったみたいに。

「優月·····だよね·····?」

「じゃあ他に誰に見える?」

「··········。」

わずかな沈黙の時間。

パチパチと音がするほどに力を入れて瞬きした。

深海にいるような静けさを感じる。

でも、不思議と息苦しくなかった。いつものようにもがいたり、足掻いたりしなくても、きちん足がつく。

まるで深い深い海の底に差し込んだ、淡い一筋の光を、見つけたように。

その弱々しい光がじんわりと広がり、辺りを明るく、美しく照らしていく。


君はこくんと首をかしげた。

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柚季 栞音 __ ゆずき しおね
柚季 栞音 __ ゆずき しおね
更新が少し遅れてしまうと思います。気長に待っていただけたら幸いです。 オリジナル小説を書いている方とお話したいです。
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