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第15話

8月1日
次の日。

本当ならば海に行く予定だった日。

カタカタと音を立てながら全力で冷風を送ってくれる、古びたエアコンの横で僕たちは大人しくシャープペンを握っていた。

ここは市内にある図書館で1番小さく、蔵書もかなり少ないため、本を読む人はほとんど来ない。

わざわざここへ来るなら、500メートル先の隣町のマンモス図書館へ行った方が効率がいいからだ。

「無理すんなよ?ちゃんと水分補給して、身体は冷やさないようにするんだぞ?」

「わかってるよ~笑」

優月はいつだってヘラヘラしながら笑っているから心配になる。

「陸斗お母様、御トイレに行ってまいりますわ~。」

「お手洗いって言えよ笑」

「オ·ト·イ·レに行ってきますっ!!」

「はいはい笑」

ひとり残された自習室。

優月が見えなくなったと同時に、彼女のスマホを探す。そこに空白の2年についての情報がある気がした。周りと、彼女にはあって、僕にはない記憶。

スポーツブランドのリュックの中には、カバーがかけられた本3冊、チョコ、スマホと、ハンカチ。

ごめんと心の中で謝りながら、スマホのロックを解除した。

緑のアイコンをタップし、メッセンジャーアプリを開こうとした。だが、こちらのパスワードまでは知らなかったため、開けない。

次に写真が保存されているアプリを起動させたかったが、指紋認証が必要だった。

日記も、スケジュールアプリも、ほかのSNSも、電卓にまで全てロックがかかっていた。

しまった。

こんなにもセキュリティーが完璧だとは計算外だ。

だって、オトイレの優月だぞ?

使ってる本人は不便じゃないんだろうか。

諦めてスマホを閉じようとした時、謝ってどこか押したのだろう、ネットショッピングアプリが開かれた。

これには、ロックがかかっていないみたいでスムーズに画面が変化していく。

プライバシーに関わるからあまり見ない方がいいと思ったが、スマホを勝手に開いている時点で、どっちにしろアウトだと開き直った。

彼女は僕と出かけてもあまり買い物をしない。ショッピングモールをあれこれ見て回るより、カフェ巡りや、食べ歩きの方がいいと以前言っていた。

それはきっとネットで済ませているからなんだろう。

勝手に納得する。

ほんの、出来心だった。

コンビニの雑誌コーナーで、大人な場所をチラ見するのと同じ感覚だった。

『これまで購入した商品』

を指で軽く触った。

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柚季 栞音 __ ゆずき しおね
柚季 栞音 __ ゆずき しおね
積み重ね、適度に。 オリジナル小説を書いている方とお話したいです。
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