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第10話

7月27日
優月と僕の関係に大きな変化は起きなかった。

「リンゴ飴って、花火大会に来ると必ず買っちゃうんだよね。」

「そういえばそうだね。優月は毎年食べてる気がする。」

僕はりんご飴より、固めの水飴にコーティングされたあんず飴の方が好きだ。

「特別美味しいわけでもないし、リンゴなんかパッサパサなんだけど、「花火大会で食べる」ことに価値があるんだよね。」

「確かにな。」

遠足で食べるお弁当と、母さんが仕事で家にいない時、チンして食べてね、と置いていく弁当の違いみたいなものだろう。

「花火大会って花火がメインなのに、見るまでの過程とか、見たあとの余韻が大事だと思わない?」

「確かにな。」

確かにな。しか言うことないわけ?と笑っていた。

わたあめとリンゴ飴を両手に持ってご機嫌な優月を横目でそっと盗み見る。

紫陽花の花が淡いスカイブルーの生地の上で、控えめに咲いている浴衣。

低めのシニヨンとロープ編みがうなじの上でひとつにまとめられて、つまみ細工のかんざしが添えられていた。

「似合っている·····。」

「ん?なんか言った?」

大きな瞳は、上から吊るされた提灯のひかりでキラキラしていた。胸元で揺れる青も、幻想的だ。

「な、なんでもない·····!」

思わずふっと目線をそらす。

「花火、楽しみだね。」

「う、うん·····。」

「まだかなぁー。」



今年も、君と一緒に来られて良かった。

この言葉はやっぱり恥ずかしくて言えなかった。

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柚季 栞音 __ ゆずき しおね
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第21回プリコン応募作品「モンブラン」 チャプター数が多くなることが予想されます。あらかじめご了承ください。 オリジナル小説を書いている方とお話したいです。
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