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第18話

XVIII
海岸沿いを歩いて、僕たちは家路につく。


「ちょっと時間ある?」

あいまいにうなずきながら、僕は答える。

「うん·····。まだ大丈夫。」

「海、寄ろうよ。」

「うみ?」

今日海に行けないと言ったのは優月のほうじゃないか。

「今からだいじな話をするね。

だけど·····、時間がないの。

だから本題から入る。

ちゃんとついてきてね。」



彼女は僕の3歩前を歩きながら、まっすぐ前を見ていた。


腕時計をしていないから、正確な時間はわからないけれど、空の色からしてそろそろ7時になる頃だ。


「君と、私は鏡なんだよ。」





唐突に突きつけられた彼女の言葉は、切なげだった。

だが、比喩のせいで内容を飲み込めない。



「どういうこと?」


僕の質問には答えず、だまって首を横にふった。


「陸斗が笑うと、私も笑って、私が泣いたら、陸斗も悲しそうな顔をする。

私たちはそんな、薄いガラスすごしの関係だった。」



迷いのない声は、あらかじめ台本が用意されていたかのようにも聞こえた。

彼女のうなじにはうっすらと汗がにじみ、手のひらを丸め込んで、ぎゅっと力強く握っている。

こちらに背を向けているため、顔は見えない。

けれどかすかに身体が震えていた。




「·····でもね、もうそこに私はいないんだよ。」



彼女の言葉はあまりに複雑だ。




「·····どういう·····こと?」




たとえ話を語りながら笑う彼女は、まるで。







「私は、2年前、死んだよ。」




透き通るような彼女の言葉は、まるで、ウソをついているようには聞こえなかった。

ふたりの間に沈黙が流れた。

波の音でさえも黙り込んだように、静かだ。

補足も、冗談だよ、という笑い声も聞こえないことで、彼女の真剣な思いが伝わる。





でも、



_______________でも。




「じゃあなんで、優月がここにいるんだよ。」



震える声を抑えながら、僕はできるだけ丁寧に笑った。


両手で耳をふさぎたい衝動に駆られる。






今さら彼女に「正解」を否定して欲しくなんてなかった。


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柚季 栞音 __ ゆずき しおね
柚季 栞音 __ ゆずき しおね
積み重ね、適度に。 オリジナル小説を書いている方とお話したいです。
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