第5話

⚖️
4,043
2020/07/05 06:19

「はあ」



ポケットに手を突っ込んで歩道に転がるタバコの空箱を蹴飛ばす。俯いたまま帰り道を歩いていると、奥の路地から大きな音が聞こえた。何か鉄製の物を蹴飛ばしたような音。



『ったく…ふざけやがって!』



その姿は、数時間前にコンビニに
コーヒーとタバコを買いに来た男だ。
空っぽの錆びた一斗缶を蹴飛ばしていた。



「……何だせえことしてんすか」



ちょっとからかうつもりだった。
さっき言われたことに腹が立ってて、


だけど俺に向けられたその目は
ぎらりと光っているのに、薄く涙が滲んでいた。





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