いつものスーツを着て、崖の先に建てられた家から出る。
背伸びをする俺の横で、メイがおすわりをしている。
メイの目線を追うと、大きな朝日が山と山の間から顔を出していた。
石畳の階段を降り、土の道で繋がった店の裏口を開ける。
ほこりっぽく、蒸し暑い部屋で、ノートを開く。
メイは、口にほうきをくわえ床を履いていた。
などと、つぶやきながら色々と雑務をこなしていると、
カランコロン
と、鈴がなった。
引き戸を開け、接客をする部屋に出ると、
細身のスーツを着た男が、
白い髪とひげを生やす、しかめっ面のおじいさんを引っ張り、
と、怒鳴る。
横に座るメイと顔を合わせると、
と、声を張った。
と、言うと
すると若い男は、老人の手を離し、
と、言い
ペコリとお辞儀をした。
そして、言った
と。
話が長くなりそうだったので、革のソファにうながした。
仕方なさそうに、富士田さんも座った。
小山と名乗るその人は、一週間前に起きた出来事を淡々と話し始めた。
突然、あの大手企業の名前が出て驚いた。
しかも、会長だなんて。
俺と、メイは背筋を伸ばした。
パーティーの帰り、小山さんと富士田さんが乗った車に、
大型トラックが、突っ込んだ。
車も二人も、跡形が無いほど、グチャグチャだったそうだ。
娘さんに愛を伝えたくて、自分の力でなんとかしようとした。
でも、思いは伝わるはずも無かった。
富士田さんは、人に頼りたくない、というような人で、
ここに来ることに強く反対したそうだ。
だから、小山さんは富士田さんが寝ているときに車に乗せ、ここに連れてきた。
胸が痛んだ。
朝とは、感情が真逆になっていた。
メイも下を向いていた。
それから、
紙に名前や依頼内容メッセージを書いてもらった。
それから、書いてもらったメッセージを
紅く、厚い紙にコピーし、
同じように紅く、金の馬が描かれた便箋に入れ、
教えてもらった家のポストに入れた。
無言で。
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途中、「と」が多い!!!
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。