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第2話

依頼
20
2020/07/04 12:06
いつものスーツを着て、崖の先に建てられた家から出る。

背伸びをする俺の横で、メイがおすわりをしている。

メイの目線を追うと、大きな朝日が山と山の間から顔を出していた。

石畳の階段を降り、土の道で繋がった店の裏口を開ける。

ほこりっぽく、蒸し暑い部屋で、ノートを開く。

メイは、口にほうきをくわえ床を履いていた。

死人屋の主人
今日は、客こないな〜
などと、つぶやきながら色々と雑務をこなしていると、

カランコロン

と、鈴がなった。

引き戸を開け、接客をする部屋に出ると、

細身のスーツを着た男が、

白い髪とひげを生やす、しかめっ面のおじいさんを引っ張り、
◯◯
早く!!!!!!
と、怒鳴る。

横に座るメイと顔を合わせると、
◯◯
俺は、俺の手で解決する!
と、声を張った。
死人屋の主人
ど…とうされました?
と、言うと
すると若い男は、老人の手を離し、
小山
すみません、
私、富士田のひつじの小山と申します。
と、言い

ペコリとお辞儀をした。

そして、言った
小山
私と富士田は一週間前“死んだんです”
と。

話が長くなりそうだったので、革のソファにうながした。

仕方なさそうに、富士田さんも座った。

小山と名乗るその人は、一週間前に起きた出来事を淡々と話し始めた。
小山
私は、富士田の付き人でした。
身の回りのことから、車の運転まで、すべてのことを任されていたんです。
富士田は、このように初対面の方には心を開かないし、
頑固だし、
うるさいですが、
本当は、家族思いの優しい人なんです。
あ、いい忘れてましたが、富士田は◯ッ◯ー◯ンの会長です。
突然、あの大手企業の名前が出て驚いた。

しかも、会長だなんて。

俺と、メイは背筋を伸ばした。

小山
富士田には、美人の奥様がいましたが、去年亡くなられました。
それで、娘さん、その夫、まだ小さな子供と、私の5人で暮らすようになりました。
富士田は娘さんが大好きだったので、とても嬉しそうでした。
海のすぐそばの家を買い、
穏やかに暮らしていたんです。
会長は用無し、と言われていましたし。
でも、会社が大手企業とコラボするということになりまして、
お祝いパーティー、の様な
接待の様な、
それに来い、と息子さん(会社の社長)に言われまして、
行ったんです。
会長はその大手企業の社長さんと古くからの知り合いだったそうで、
思い出話にふけていました。
でも、その帰りでした。
悲劇が起きたのは…………………。
パーティーの帰り、小山さんと富士田さんが乗った車に、

大型トラックが、突っ込んだ。

車も二人も、跡形が無いほど、グチャグチャだったそうだ。

娘さんに愛を伝えたくて、自分の力でなんとかしようとした。

でも、思いは伝わるはずも無かった。

富士田さんは、人に頼りたくない、というような人で、

ここに来ることに強く反対したそうだ。

だから、小山さんは富士田さんが寝ているときに車に乗せ、ここに連れてきた。

胸が痛んだ。

朝とは、感情が真逆になっていた。

メイも下を向いていた。
死人屋の主人
そうでしたか………。
それでは、富士田さん、
私が解決するということでよろしいでしょうか?
富士田
ハァ
富士田
分かった。
死人屋の主人
それでは、手続きをするので、少々お待ちください。
それから、
紙に名前や依頼内容メッセージを書いてもらった。
死人屋の主人
それでは、手紙を送らせていただきます。
それから、書いてもらったメッセージを

紅く、厚い紙にコピーし、

同じように紅く、金の馬が描かれた便箋に入れ、

教えてもらった家のポストに入れた。

無言で。
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途中、「と」が多い!!!

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