そんなこと聞いたことがないなと思い、笑いながら続きを読んでいく。
メッセージを読んでいて、笑う声が止まる。
息なんかちゃんとしてる。
だって、息をしなくちゃ生きていけないじゃない。
バカにするようにまた笑い、でも心の奥では的を射られていて胸が苦い気持ちでいっぱいになる。
そして、メッセージは最後の二文になった。
下唇を嚙んで、グッと込みあがってきたものを我慢した。
私、閉じこもってから一度もちゃんと空なんか見ていない。
見ていたのは下ばっかりだ。
私はスマホを手にしたまま立ち上がり、窓を開けた。
初夏を思わせる少し暑い日差しを肌に感じ、でも朝の澄んだ空気は私の体に気持ちよさをもたらしてくれる。
私は思い切り深呼吸をして空を見上げた。
そこには都築先生のメッセージ通り、真っ青な空が広がっている。
どこまでも遠く続く青空を見ていると、無性に泣きたくなった。
自分がとんでもなくちっぽけな存在みたいに思えて、悩んでいた心が少しだけ軽くなった気がした。
それはポツリと呟いた独り言だった。
でも、なんだか都築先生に言いくるめられたみたいだし、変なポエムに汚染されたみたいで自分自身が気持ち悪くなってくる。
スマホを持っていない手で腕をさする。
でも、そんなふうに思いながらもその日は一日カーテンを開け、窓から陽の光を部屋に取り込んだ。
なんだかそれだけで真っ当な人間に返れた、というのは言い過ぎかもしれないけれど、それでも気分はよかった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。