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第16話

【空を見上げれば 5】
そして到着したとなり町の図書館は、地元の図書館よりも倍近く広い館内だった。
ジメッとした肌に館内の冷房はとても心地よく、私は一気にホッと息をはき出す。
都築先生
都築先生
今日は土曜日だからちょっと人が多いですね
紗南
紗南
よく来るの?
都築先生
都築先生
えぇ。休みの日で部活動のない日はほとんど図書館で過ごしてます
紗南
紗南
……遊びにとか行かないの?
都築先生
都築先生
行きますよー。といっても友人はサービス業の人が多いので夜によく会いますねぇ
ということは、先生は彼女とかいないのかな?
そんなことを考えていると、先生は「あっ、あそこに座りましょうか」と指さした。
先生が指さした場所は、二段上った先にあった窓際の二人用の席だった。
大きな窓からは図書館の周りに植えられている様々な緑が見える。
私達は向かい合わせになって座り、教科書とノート、筆記用具を出した。
先生も持って来ていたリュックの中からファイルに挟んでいたプリントを数枚出す。
都築先生
都築先生
英語の谷先生から弥生さんが休んでいた間の小テストのプリントを預かってきました。今日はこれをやりましょうね
紗南
紗南
うっ……英語、嫌い
都築先生
都築先生
まぁそう言わないで。僕も昔を思い出して英語、頑張りますねー。一緒に解いていきましょう
紗南
紗南
なにそれ、教えてくれるんじゃないの?
都築先生
都築先生
何事も問題は一緒に解決した方がいいですよー。なので、一方的には教えません
そういえばこの人の授業って「教える」じゃなくって「一緒に答えを導き出す」やり方だったなって思い出した。
それを理解して、シャーペンの先から芯を出しながら小テストのプリントと向かい合う。
ここのところ全く勉強から遠ざかっていたせいで、登校拒否する前に習っていた英文さえ訳せなくなっていた。
都築先生
都築先生
どこがわかりませんか?
紗南
紗南
もう記憶がぶっ飛んでて、何が何だかわかんない
都築先生
都築先生
あははー、それは困りましたねぇ
そんな緩い空気のまま、私は先生が持参してきた英和辞典とにらめっこしながら勉強を始めた。
久しぶりに頭を使う時間はとんでもなくだるかったけれど、ゆっくりと流れる時間で行う勉強は学校でする授業よりもずっとわかりやすかった。
先生のこの柔らかい独特の雰囲気のおかげかもしれないけれど。
都築先生
都築先生
予習はもちろん、復習も大事なんですよー。勉強は特にね
紗南
紗南
ふぅん
今、それを身にしみて感じたところだ。
さすが先生をしているだけあって、教え方がうまいなぁと感心していた時だった。
都築先生
都築先生
あっ、これ過去形じゃないですよ
紗南
紗南
えっ、どれ?
先生が身を乗り出したと同時に私も同じ動きをした。
額がぶつかるくらい、私と先生の距離は近くて男の人にこんなに近寄ったのは初めてだ。
都築先生
都築先生
ほら、ここはですね……
頭を上げればとんでもなく近い距離にいる先生のせいで、せっかく教えてもらった説明は全く頭に入ってこなかった。
都築先生
都築先生
わかりましたか?
紗南
紗南
あっ……