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第4話

【暗雲 2】
勢いよく飛び出したその先で、出席簿を持って歩いてきたある先生とぶつかってしまう。
紗南
紗南
きゃぁ!
都築先生
都築先生
うわっ!
女子生徒の私より驚いて大きな声を出したのは、私や恵子のクラス、2‐Aの担任の都築先生だ。
お互いに尻もちをついたから廊下には激しい音が響いた。
都築先生
都築先生
や、弥生さんじゃないですか。大丈夫ですか? どうしてこんなところに……
都築先生は弱々しい声を出しながら、腰をさすって立ち上がる。
真面目な印象がある黒色の前髪の間から見える瞳には、心配そうな色が見えた。
急いでいた私は軽く頭を下げて、先生の前から立ち去ろうとするけれど、都築先生は両手を上下させて私の行動を阻止した。
紗南
紗南
ちょっと先生邪魔! どいて!
都築先生
都築先生
そ、そういうわけには……今、弥生さんものすごくお尻をぶつけましたよね! 大丈夫ですか? 男の僕は何てことないですが、女性であるあなたには……
こっちは急いでいるのにおっとりとした話し方で、そのうえ女子生徒相手にお尻の話を始める先生に怒りの感情が込みあがってきて、思い切り睨んでしまった。
紗南
紗南
先生、本当に最悪! セクハラ! どっかいって!
都築先生
都築先生
セ、セクハラ……?
都築先生の色白の肌は、私の「セクハラ」発言ですぐに桃色に染まる。
でも、今は先生のことはどうでもよく、恵子の誤解を解くことが最優先だ。
都築先生
都築先生
あっ、弥生さん……!
都築先生の脇をすり抜け、じんじんと痛むお尻を我慢しながら走り出した。
ここは化学準備室がある廊下で、私や恵子のクラスはこの先を真っ直ぐ走り、角を曲がったすぐのところにある。
恵子ともう一度話をして、ちゃんと誤解を解くんだ。
都築先生
都築先生
廊下は走っちゃダメですよー……!
後ろからなよなよした都築先生の声が聞こえてくるけれど、私はその声を無視してひと気の少ない廊下をただひたすらに走った。
そして、到着した2‐Aの教室に私が飛び込むと、教室の中央には泣き崩れる恵子の姿があった。
まどかを始めとするクラスの女子のほとんどが恵子を囲んでなぐさめていて、その視線は強く冷たい瞳の色で、私へと一斉に向けられた。
紗南
紗南
け、恵子……
おびえながらも、恵子に向かって声をかける。
紗南
紗南
恵子、もう一度話をしよう
まどか
紗南って本当、自己チューだよね。なに、イイ子気取ってんの?
そう言い放ったのは、なぜか私と恵子の彼氏の相沢君が抱き合っているというウソをついたまどかだった。
紗南
紗南
まどか、アンタよくも恵子にウソを言ってくれたわね
まどか
はっ? ウソ? ウソをつき続けたのは紗南の方でしょ。恵子の彼氏を奪おうとしたくせに
紗南
紗南
だから、それは誤解だって……!
私の言い訳も虚しく、噂好きの女子達はまどかの話に食いついている。
そして、私を見る視線は軽蔑の視線だ。
まどか
相沢君だって認めてるんでしょ? あんたも恵子に素直に謝ったらどう?
黒髪のロングヘアーを耳にかけ、強めの視線は正義感たっぷりの瞳に変わっている。
「ウソをついているのはまどかの方じゃない!」って、言い出したかったのに。
でも、それは次々と登校してくるクラスメイト達の声でかき消されてしまう。
クラスメイト
うわっ! 恵子どうしたの?
そんな言葉が泣いている恵子にかけられればかけられるほど、私の立場は弱いものへと変わっていく。
クラスメイト達が泣いている恵子をなぐさめている間、私は一定の距離を保ったまま恵子をずっと見ることしかできないでいた。
だって、今はなにを言っても、恵子の心にはきっと届かないと思ったから。