side:佐久間大介
" 女だから "って、なに?
理由になってない。理不尽すぎる。
筋が通ってない。
私だって、私なりに頑張ってる。
なんも知らない人達にうるさく言われたくない。
珍しく酒に酔ったあなたが泣きながら訴えてくるのを、俺は背中をさすってやることしか出来ない。
正直女心なんて分かりゃしない。
ずっと一緒に活動してきてるけど、あなたは掴みどころがなくて、どこかふわふわしてるから未だに今この瞬間、あなたが何を感じてるとか
何を考えてるとか正直分からないし読み取れない。
唯一分かるのが、年に数回喋る康二と一緒に居る時。
あと、こうして酔っている時のみ。
『踊りやってさっくんとかラウみたいに上手ないし、しょっぴーみたいに歌がうまいわけでもない』
「そんなこと、」
『そんなことある。ひーくんみたいに何か凄みがあるわけやないしふっかさんみたいにトークを回すことも出来ひん。情緒なんていつも不安定で舘さんみたいには一生なれへん』
『阿部ちゃんみたくなにか強い武器なんてないし、めめみたいに表紙飾ったことも無い』
『私は...私はまだ慣れへん、東京に馴染めてへんのに、まだ関西のこと引きずっとんのに、康二は私を置いてく』
『私は、皆みたいになれへん...』
「そんなことないよ」
『...死ぬ覚悟でやってきたはずなのに、さ』
暫くして、あなたは泣き疲れたのか寝てしまった。
俺はとりあえずお会計をして、タクシーを捕まえてあなたを抱きかかえて乗り込む。
結局、最後まで" そんなことないよ "くらいしか、言えなかった。
気休め程度の言葉。
こんな時に、阿部ちゃんだったら、ふっかだったら、
─────康二だったら。
きっともっとあなたの為になることをすらすらっと言ってるんだろうな。
俺にはそんな余裕なんてないし、ほら、こうやって泣き疲れたあなたの背中をさすることくらいしか出来ない。
" いつも頑張ってること、俺は分かってるからね "
きっと言えないや、無責任すぎてそんなこと。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。