春の2週間程の長期休暇、私は皇帝から
話があると伝され自国にいるのだが
グレイス帝国32代皇帝アメリオ・グレイス
世界指折りの魔力を持ちあのマレウス・ドラ
コニアの祖母と並ぶ大魔法士であり、私の実父。
金髪碧眼で整った容姿は人気をが高く、沢山
の女性を虜にしてきた
だが、女性からの猛アプローチにも全く
動じないほど亡き皇后のことを未だに
一途に思い続けている
民からの敬愛、世界中からの尊敬、
各国を鎮圧させるほどの魔力、と
超絶ハイスペックの私の父親は
超絶変態である。
自分の子供、特に私のことをすっごく
溺愛されていて、その溺愛っぷりは異常
であのカリムと並ぶほど愛が重い
今もこうして、私を見るなり抱きしめている
渋々離れ、再度王座に座る
これでも一応、相当な実力者でおまけに
あの化け物を育てた本人だ
こんな変態でなければ、私も素直に
尊敬したと言いきれる
(これは…………また面倒な事に………)
(どうしよう………隣国とはできるだけ仲を
とり持たなければならない、グレイス
帝国は、世界一権力のある帝国、その分
敵も多い………これ以上敵を作る訳にもな)
そして、始まった王太子とのデートは
長期休暇最終日にすることになった
最終日なので午前中まででって言い訳
できるし、適当に話合わせて適当に終わら
せましょう
メイビス王国のノア王子は紳士且つ聡明
でいて、容姿も100点と各国の独身令嬢
から人気が高い、目の前にいる王子は
まさに爽やかイケメンで物語に出てくる
王子様のよう………まぁでも
(カリムほどじゃないわね)
「姫様!これは僕は一途ですよアピです
お気をつけください、こういう奴ほど
むっつり────」
「リア、少し黙れ」
「姫様〜応援していますからね〜!!」
右耳につけている小型連携機から
リア、リズ、サラ、と勢揃いだ
どうして、グレイス帝国トップレベルの
実力者(私の護衛)が揃いも揃ってこんな
ことをしているのかと言うと
王太子から護衛は不要です、とのことで
あまりにも怪しかったのでこうした護衛の形
にした、流石に王太子の命令は無視できないからだ
結婚を約束した恋人がいること、それが
アジームの次期当主という王族並みの地位
を持つ相手という事は既に伝えている
にもかかわらず、この猛アタック
「距離を縮めようという魂胆がみえみえだな」
「王道同人誌の攻めにこういう奴多いんですよ
爽やか王子に見せかけたヤンデレ腹黒王子」
『残念でした〜
姫様にはカリム様がいらっしゃいますから〜』
(この子達、少しうるさいわね)
そして、彼は私の腰に手を添え慣れた
様子でエスコートをしてくれる、貴族
では常識なので、黙ってされるがまま
にされる
(帰った後、カリムに会う前に体洗わなきゃ)
また他の男の匂いがついていると地雷を
踏んで新学期そうそう腰を痛めたくない
貸切のオシャレな高級レストランに案内
され風通しも景色も特上のバルコニーに
2人して座る
お互いのコース料理を一つ一つ片付け
つつも世間話や政治の話をする
見るからにアピールをしてくる彼に
左手を口に当て適当にあしらう
私の左手には、虫除けにとリズから貰った
シンプルなデザインのルビーの指輪。
(左手の薬指につける、なんて完璧な
虫除けなのかしら流石私の従者)
左手の薬指に指輪をつけるなんて別の
男からプレゼントされましたと言っている
ようなものだ
まさか聞いてくるなんて思っていなかった
ので少々焦ったが、何とか恋人の名前を
呼んでしまう、それも呼び捨てで間違える
最高の作戦を咄嗟に遂行できた
見るからにしゅんとする彼に少し
ばかり罪悪感が残る
(虫除けのためとはいえ、
少しやりすぎたよね………)
『もっといってやってください!
姫様!勘違い男成敗ですよ!』
「サラの言う通りです、こんな底辺男
が姫様と釣り合うはずありません」
「お前達、もう少し静かに見守らないか」
(うっ…………どうしよう……あと30分は余裕が)
「あなた、早く帰れ嫌な予感がする」
優秀な従者がそういうもんだから、私は
少しの躊躇いを感じつつもきちんと断る
そしてそのまま同じ馬車に2人で乗った
(なんでそんなに知ってるの………?
まぁでも1年ほど同じ学校なら知ってても
おかしくないよね)
(あのカリム以上に思われたら、困るんだけど)
流石に、小型連携機の電源をOFFにした
一国の次期王の振られる姿をいくらあの
3人にでも晒すなんて可哀想、何より私
が恥ずかしい
胸を痛めつつも自分の本音を話す
頭を抱えるどう考えても様子がおかしい
状態のノア様に心配で近づくと、腕を
引き寄せられたそしてそのまま首に顔を
埋めるノア様に驚きつつもすぐに腹に1発
キメた
そろそろ、電源を切られ心配した優秀な従者
と双子達が駆けつける頃だろう
気絶した王太子を放って馬車から飛び出す
想像通り、リズがそれを受け止め気づけば
リズに抱えられ空を飛んでいた
横を見ると、サラに抱えられ空を飛ぶ
リアの姿もあった
そしてそのまま、怒り狂うお父様を何とか
なだめた後、NRCへと向かった馬車の中で
なんと、左手の薬指にはめた指輪が
抜けないのだ
(わ、私こんなに太ってた!?)
絶望しながら窓の外を眺めると見慣れた
風景が目に入り、馬車が止まる
(なるべく、カリムに会わないようにしよう)
既に暗くなっているスカラビア量の廊下を
なるべく音をたてないように歩く
人生終了の鐘が頭に鳴り響いた気がした
過去一綺麗な回れ右をして咄嗟に走り出す
後ろをチラッと見ると猛スピードで
野生のごとくおってくる
自分で言うのもなんだが、超絶ハイスペック
な私が唯一の弱点「スタミナ」スタミナが
皆無でおまけに喘息持ちの私にはすぐに
カリムに追いつかれてしまった
追いついたカリムにそのまま
後ろから抱きしめられる
突如担がれ、無言で歩き出すカリム
角度的に顔が見えないので怒ってる
かどうかも確認ができない
(バレた?あんな一瞬で?
男の匂いに気づく?)
そしてそのままカリムの部屋に下ろされ
直後壁に肩を、両手を、押し付けられる
無表情で怒りを含んみ見つめてくる瞳、
怒っている時の口調、怒気を含んだ声色
(お、怒ってる………)
私のその言葉で私の両手を掴む力が
ぎゅっと強くなる
私の手をとり自分の頬にあてがい優しく
微笑んだ彼に安心したのもつかの間、次
の瞬間顔を歪め怒気を含んだ声色で
(どうしよう、全く信用されてない)
そう言って、カリムは私の首筋に指を伝わせる
不思議に思い、丁度反対側にあった鏡で
自分の首を確認すると、そこにはキスマーク
がついていた
(あの時、王太子の野郎つけてたのね)
最悪だ、これじゃあカリムが疑っても無理はない
そして、カリムに事情を全て語った
全てを語り終わった後、やっと腕の
力が緩くなった
私の両手はカリムの真っ赤になった手跡
がしっかりとついている、彼はそんな私
の手を申し訳なさそうに見つめる
そして、私の頬に手を添え唇を重ねる
一つ一つ丁寧にそして、確実に私の敏感
な所をゆっくりと刺激する
(あ〜このキスってことは、今日は
絶対甘々スローセッ○スだ〜)
服の中に入ってくる手に目を瞑り覚悟を決めた
控えめに愛らしく聞いてくる恋人に
いつもなら頬を打って明日は学校だ
と怒る私もゆっくりと頷く
そんな私に少々驚きつつもすぐ様微笑み
ベットに押し倒した
(ま、待ってまだ風呂に入ってない
王太子の野郎の匂いがつい──)
私の胸元に顔を埋め攻めていた手がピクリと
止まり黒い笑みで私の髪を一束掴み優しく
キスする
(すぅぅぅ……………………逃げよう)
命の危険を悟り咄嗟にカリムを突き放し
急いで扉へと向かう、それも無駄な抵抗で
逃げようとした私の体を後ろから抱きしめ
そのまま壁に押し付ける
彼のその笑みがあまりにも危険でつい
従者の名前を必死に叫ぶ
咄嗟に私の唇を奪いすぐ様に舌を入れる
(あぁ明日は腰を痛めるのか、式典中
ずっと立っていなきゃいけないのに
痛みを我慢しなきゃいけないのか)
心の中で弱音を吐きつつも彼の舌使いに
必死に応え背に手を回した
そしてこの日は安定に朝まで抱かれた
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。