〈あなた〉
もう、帰る時。
そんなふうに見えてたかな…
恥ずかしいな。
いつもと変わらず笑顔で送り出してくれた。
亜嵐くんとあなたで電車に乗る。
満員の電車の中は暑い。
あなたと亜嵐くんはドア側に
押され
亜嵐の顔が真ん前に。
近い。
亜嵐くんの顔こんなに間近で
見たのは初めて。
鼻が高くていつ見ても整っている
この状況が10分間も続いた。
やっと駅について
人が減っていく。
頭をかく。
駅から出たら外には
しんしんと積もる雪。
あなたは雪がだいすき。
走って雪に触りに行く。
周りを見ると通り過ぎる人から
痛い視線。
すぐ立ち上がって何も無かったように
平常心を持った。
と言って亜嵐くんが歩き出した。
そうだった…
絶対自分も亜嵐くんの立場だったら
絶対辛い。
一向にやまない雪とともに
二人は歩く。
振り向くと夕日に照らされて
光る雪たち。
雪に見とれていると
【パシャリ…】
照れくさそうに言う亜嵐くんは
いつもはかっこいいのに
今はとても愛おしく見えた。
あなた達は笑いあって
帰った。
一瞬ドキッとしてしまった。
まさか、
後にあんな事が起こるなんて─────
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!