〈あなた〉
今日は亜嵐くんの家で
まったりする日。
カップルはどこか出かけたり
遠出したりするのが当たり前だと
思っていたが、こうやって
まったりするのも悪くない。
けど、緊張するな。
あがったことはあるけど
ほんの一瞬で、今日は違う。
【ピーンポーン】
チャイムを鳴らした。
すると、インターホンの奥から
ちょっと緊張してうまく話せない。
明るいテンションでいてくれたら
気楽でいられる。
………
入ると玄関全体に広がる
甘い香り。
とってもいい匂い。
隣の靴箱の上には綺麗なお花。
亜嵐くんはにこやかに言った。
亜嵐くんスマイルはいつ見てもいい
今日は親も誰もいないみたい。
ドキドキするな……
亜嵐くんの部屋に案内され
お茶を出してくれた。
テレビが付いていて
壁にはサッカーの写真や思い出たち。
男の子っていう感じの部屋。
一口、口に含み飲み込む。
そう言うと亜嵐くんの目付きが変わった。
どんどん迫ってくる。
これは…もしかして────────。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!