第125話

六章 四節 君は、強い
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2021/02/06 08:40


 私の嗚咽と、声にならない声が静かな森のなかに響く。music forestと、magic countryの狭間にある祭壇の上で……声を失った私の声が。

「エイカさん……そろそろ時間だ、儀式を始めるよ」

「エイカ……一人にするのは本当に申し訳ないけど……君は、僕がいなくても大丈夫。君は、強いから……」

(強い……それはカイトが勝手に思っているだけで本当の私は弱いよ……)

 もちろん、それは声になるはずがなく自分の心に沈んでいく。それは、恐怖だったかもしれない。大切なものをなくす恐怖、そして誰にでも訪れる死を失う恐怖……。

「それじゃあ二人とも、位置についてくれ」

 そっと、カイトのそばを離れて私はカンパンニュラの石段についた。カイトは、無理矢理に微笑もうとしていて、けどそれを見ると胸が張り裂けそうなほど切なくなって……。

「エイカ、ごめんね。これから、頑張って……」

 カイトの声が切なく響く。しかし……音がなくなったんじゃないか、って思うくらいの空間に一筋の……懐かしい声がきこえた。

エイカ、カイト、逃げろ!!」

 彼女の声が、聞こえた。拐われていたはずの、エドナの声が……そして。

「こんなところで、何をやろうとしているのかしら?」

 間違えない、これは……レイシアの声だ!!

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