私の嗚咽と、声にならない声が静かな森のなかに響く。music forestと、magic countryの狭間にある祭壇の上で……声を失った私の声が。
「エイカさん……そろそろ時間だ、儀式を始めるよ」
「エイカ……一人にするのは本当に申し訳ないけど……君は、僕がいなくても大丈夫。君は、強いから……」
(強い……それはカイトが勝手に思っているだけで本当の私は弱いよ……)
もちろん、それは声になるはずがなく自分の心に沈んでいく。それは、恐怖だったかもしれない。大切なものをなくす恐怖、そして誰にでも訪れる死を失う恐怖……。
「それじゃあ二人とも、位置についてくれ」
そっと、カイトのそばを離れて私はカンパンニュラの石段についた。カイトは、無理矢理に微笑もうとしていて、けどそれを見ると胸が張り裂けそうなほど切なくなって……。
「エイカ、ごめんね。これから、頑張って……」
カイトの声が切なく響く。しかし……音がなくなったんじゃないか、って思うくらいの空間に一筋の……懐かしい声がきこえた。
エイカ、カイト、逃げろ!!」
彼女の声が、聞こえた。拐われていたはずの、エドナの声が……そして。
「こんなところで、何をやろうとしているのかしら?」
間違えない、これは……レイシアの声だ!!
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。