第88話

二章 三節 仮面
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2020/11/13 17:39


 わいわいガヤガヤと楽しげに響く祭り囃子に、ひらりひらりと舞う美しい着物。街行く人には全員笑顔が咲いていて、空間には幸せが飽和している。鼻腔を刺激するのは、美味しそうな食べ物の匂いで……今すぐ買いには知りたいところを私は我慢していた。だって今は……

「ねぇエイカ、この仮面よくない⁉」

 今は仮面屋にいるのだ。なんかカイトが買いたいんだって。しっかりと木で作られていて、壊れにくそう。それに立派なの。カイトが今手に持っているものは狐のお面。

「いいと思うよ」

「だよね、おじさん~これください‼」

 うわ……即買っちゃうんだね。同じのを……二つ買ってる?

「はい、これあげる」

 そういって、狐の仮面を一つ差し出してくるカイト。私は受け取っていった。

「ありがとう‼」

 その仮面を顔の横につけてみた。自分のために作られたみたいにぴったりとしている。

「エドナのサイズに合うものはさすがになかったから……これから探そうと思うんだけどついてきてくれる?」

「別にいいけど……どうせまだ時間はあるんだしね」

「ついでに美味しいのが何かあれば買ってあげるよ」

「本当⁉」

「うん」

 しょうじき、食べ物につられている気もしないでもないけど……まあいいか。

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