遠い昔、この世界は二つに別れていました。一つは、錬金術が発達している『magic Country』。もう一つは、歌の魔法が溢れる『music Country』という国でした。
どちらも、良い国でしたが二つの国の人達はそれぞれ違う考えを持っていました。
いつだったでしょうか、そのちょっとの違いが原因ですれ違いがおき、いつしかそれは戦争へと発展してしまったのです。
『music country』は自分達の歌の力を信じて、『magic country』は化学の発展がもたらす幸せを疑わずに。二つの国の対立は深まるばかりでした。
ある日、世界に二人の特別な子供が生まれました。その子供達はいつも笑顔を絶やさずに、二つの国の和平を誰よりも強く望んでいました。
一人は、『magic country』の王族として、もう一人は『music country』の王族として産まれました。どちらも聡明で、賢い方だったと伝えられています。
二人は今までの王とは違い、戦争でぶつかり合ってわかり会うのではなく互いに歩み寄ってわかり会う道を探しました。
そして時は過ぎ十四年後、二人が親から王位を受け継ぎました。そこから幾度にもわたる交渉の末にとうとう和平を結べることとなったのです。
『music country』は二つの国に千年の存続を、『music country』は二つの国に千年の幸せを約束し、二つの国は和平したのでした。
このことが、お互いの国の王族から発表されると国の民は全員安堵し、喜びました。皆、戦時中に自分の命、大切な人の命が危険にさらわれるのを怖がっていたからです。
どちらの国にも、今までなかった笑顔の花が咲き、幸せ一杯の雰囲気になりました。
ですが、そんな幸せは長く続きません。『magic country』の大臣が、『music country』の女王様にとある嘘をついたのです。
その内容は、『magic country』の王様が『music country』を乗っ取ろうとするという内容でした。
これを聞き怒り、疑い、悲しみ、様々な感情が女王様を取り巻きました。
そして、女王様は祖国の誇りのために、『magic country』に宣戦布告をしました。
ひとつになった国は、こうして二つになってしまったのです。
また時は過ぎ、女王と王様が亡くなったころ、世界は度重なる戦争により荒廃してしまいました。
一回もとに戻ったはずの草原はみるみるうち枯れはてて、この世界に混沌が再び訪れたのです。そして、『music country』と『magic country』は互いになくなり、それにより不本意ながら終戦致しました。
一連の事件から千年後の今、私たちの目の前に広がっているこの森は『music forest』。かつて『music country』が広がっていた場所です。
この話は今まさに千年の時を経て始まろうとしている『music forest』の物語です。是非、お聞きなさって下さいませ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!